第二章14
「――――見つけた」
その声は幼く、
「見つけた、見つけた、見つけた」
その声は甲高く、
「あははははははは、やっとやっとやっとやっとあのクソババアも死んだのか。いい気味だいい気味だ」
そして、その声は耳障りな罵倒だった。
「!?」
「何奴!」
即座に戦闘態勢へとエリーシャは移行する。僕を庇うように立ち、白銀の槍を呼び出し構えて。
臓腑を捩繰り回す様な暴言の主は、落ちてきた降りてきた、螺旋階段の頂点から底の底まで、一直線に。
――――沸騰して煮えたぎっていた血が、一瞬で底冷えした。
「はじめまして、御先祖様」
「あ――――ぁ………………?」
狼狽たえる僕とエリーシャ、ソイツの異様さに、ソイツの奇妙さに。
「あなたの妹、アカリの子孫にあたります」
其の目、其の口、其の顔、其の体――――身体全部位全パーツ、その尽くが、似ている、似通っている、似すぎている!
「逢いたかったよ御先祖様、殺すために
逢いたかったよ御先祖様、奪うために」
誰に?誰に似てるかって?それは………
「あなた………だれ?」
エリーシャの声は震えている。問い質すことを恐れている。同質にして異質なるものを恐れて。
「名は 『コウキ』」
「――――な、に?」
それは、似ていた、この―――『僕』に。
「姓は『ヤグチ』」
いいや、似ているけど、違う。
「異名は『剣聖』」
そいつは、ニヤリと、哂う、口の端だけで。僕が決してやらない哂い方で。
「この俺こそが正真正銘の『剣聖』ヤグチ・コウキだと言ったら………さあ、どうする御先祖様?」