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第二章6

 浮付いた意識は消えて体温は一気に氷点下。

「どうして、こんな、ものが………」

『戦争で未曾有の苦しみを味わう前に、世界の終焉を目にする前に、人類の絶滅を体験する前に――――』

 張り紙には、こう綴られている。

『――――安楽死、しませんか』

 普通の光景、と思っていたものが、瞬時に色褪せていく。

 この張り紙だけではない。

 近くの薬屋に、本屋に、店舗に、それは並んでいる。

○『安楽死の薬 処方します』

○『苦しまずに死ぬ方法』

○『安楽死代行業務 死後の整理請負ます』

 見れば、視るほど、飛び込んでくる、不吉。

「………分かりましたか、コウキ君」

 悲壮な顔で、『安楽死の薬』を見つめたまま動かない老女――――を見つめて固まっている僕に、

「大袈裟なほど、馬鹿らしいほどあなたの宣伝広告を流さなければいけない理由が」

道の端には大きな教会、祭られているのは――――『剣聖』ヤグチ・コウキ。

目を閉じ、跪き、両手を合わせ乞い願う老若男女。一心不乱に『御救い下さい、御救い下さい』と呟くさまは、見ていて………肝が、冷える。背中から冷たい汗が流れ落ちる。

どこでもいつでも見かけられるような?何を馬鹿な!

――――全く持ってこれは末期状態ではないか。

僕から少し距離をとってエリーシャが呟く。

「コウキ君、表面上は普通に見えますが……もう、この世界は限界なんです」

 微笑には苦味を含んでいて、瞳は真剣。言葉にはピリピリとした緊張感。

「次に行くところで……この世界の現実が見えてくると思います」

 自らの(やまい)を告白するかのような口調に、我知らず息を飲み込んだ。



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