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第一章 11

「アマギディオン………聖戦(アマギディオン)………」

 

僕は何度も、何度も、その言葉を呟く。

「僕が………こんな、化け物と?」

 先ほどの光景を恐怖と共に思い出す。超常の力を持って全ての生命を殺戮するミゼリコルディア、たった一人でも数億の生命を殺せる『刺客』を。

「む、無理だよ!無茶だよ!ぼ、僕がこんな化け物に勝てる筈ないじゃないか!?」

「コウキ君が敗北すれば、最早誰もガモンハイドに太刀打ちできる存在はいなくなります。そして、戦力を失った月の世界は…再び地球と同じように滅ぼされるでしょう」

 淡々とした口調のエリーシャ。それは逆に暗い未来を想起させる。

「コウキ君だけが、最後の希望なんです」

「そんなこと………言われ、ても。僕にはそんな力なんて微塵もないよ!」

「力はあるんです、間違いなく。記憶喪失の所為で、その使い方を思い出せないだけ」

 なおも渋る僕に、エリーシャのキツイ視線が返される。

「ならば、身体で思い出させてあげます」

 髪を掻き揚げて、片手を伸ばす。

「シュベルトライテ!」

 号令一下、光と共にエリーシャの右手に大きな槍が出現し、構えた――僕に向けて。

 巨大な、エリーシャの身長より大きい槍。魔法を学んでいないものでも肌で気づくだろう、この槍の巨大な魔力が、大砲やミサイルよりも危険な神威兵器だということを。

「否が応でも、無理矢理にでも思い出させてあげます。あなたの力を」

 白銀に輝く鋭い槍の穂先が、僕に……僕の心臓に向けられる。その目には本物の殺気。

「本気で死線をくぐれば、力も発揮されるに違いありません」

「お、お嬢様〜?あんまり手荒なことはぁ〜お止しに〜〜」

 エリーシャの後ろでおろおろするネルさんは止めようとするが、

「今のコウちゃんの状態を知るにはそうするのが一番だろうね………やる価値はあるよ」

「は、はっど………?」

 ハスドルバルが、笑って凶行を促す。

許可を得たエリーシャは口元に笑みを浮かべて腰を落とした。

「避けるか、止めるか、弾くか――さもなくば死か」

「エリー…………シャ?」

 身が竦む、身が凍る、身が縮む。

「大丈夫ですよ、コウキ君の技なら私程度の突き、軽々と避けられるはずですから」

 ニコリとした笑みは却って恐怖心を増した。

「それに、万が一避けられなかったとしても、アンヴァリッドならすぐに再生しますから、心配はいりません」

 恐怖で固まり、逃げる事も出来ない僕はただジタバタと意味の無い行動をとる。

「殿方が取り乱すなんて、みっともないですよ」

 ダメだ、動けない、みっともなく声を上げ、助けを乞おうとして………

「ハッド……誰か………誰か、助け……!」

 ――――衝撃が胸を貫き、僕の意識は闇に落ちた。



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