第一章 10
「――――一週間後」
ゴルヘグが、厳かに口を開いた。
「月の永久影に眠るミゼリコルディアの封印が解けます――その名は『腐敗王』ガモンハイド。百年前、箱舟計画で逃げる人類を絶滅させる為に追ってきたミゼリコルディアです」
「月の『地球化』直後で消耗していた母ディドにはガモンハイドを倒す力は無く…封印を掛けて相討ちに持ち込むのが精一杯でした」
エリーシャが言葉を続ける。
「――――『地球化』?ってなに?」
「言葉どおりの意味です。星の環境を地球と同一に強制変換する究極魔法―――この時母ディドが行ったのは『重力の地球化』。本来地球の六分の一しかなかった月の重力は、母ディドの『重力の地球化』より、一Gを保っております」
「――そんなすごいこと、出来るんだ」
途方もないスケールの魔法に、ただただ感心する。
確かに、重力に地球との違いは感じられない。その所為で、ここが月だと到底信じられなかったわけだが………。
「封印解除後、『腐敗王』ガモンハイドに聖戦で必ず勝利する事。
それが今回の復活でコウキ君の果たすべき使命です」
「聖戦に勝利さえすれば、再び『地球化』を行う事ができるようになるんだ、コウちゃん。そうすれば、月の今の閉塞した状況を解決出来る」
エリーシャが、そしてハスドルバルが、真摯な瞳で僕を見つめる。
「アマギディオン………聖戦………」