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短編・その他

天は二物を与えない。 ~残念系乙女ゲームに転生したある少女の独白~

作者: 山科碧葵

 前略 乙女ゲームに転生したい方へ。

   私は如月(きさらぎ)ホノカ――前世の名前は忘れてしまいました。すみません。

 もしあなたが転生する事になるとしても、乙女ゲームに転生するのはやめておいた

方が良いと私は思います。

 この手紙を読んだ人の多分、十人に九人は何故だ? と思うでしょう。

いえ、別に全部が全部そうってわけじゃ無いんですよ? 私が言いたいの

は、世の中には(なが)めるだけだから良い物もあるって事なんです。





「はい、あ~ん♡」

「んぁ……」

 ソシャゲとか少女漫画に出てきそうなこの美形の男性こそ、私が転生し

た乙女ゲーの攻略キャラ。朝風(あさかぜ)ヒデヨシ――格好良い見た目に釣られて、

必死になって攻略した私の今までの時間を返せーっ! と叫びたかった。

 だけど叫んだからと言って、この世界ではエクスクラメーション・マー

クが増えるだけなので叫んだところで何の意味もなさない。

 ――試してみる。


「バカヤロー!!!!!!!!!!!!!」


 こんな感じ。ちなみに隣の彼は私が叫んだことにさえ気づいていない、

黙々と自分の指を舐めている。



 え? 何で指なんか舐めてるって? それはさっき私に「あ~ん」した

からですよ。

「ホノカ……美味(おい)しいよ♡」

 一ウィンクで数百メートルガソリン無しで突っ走れそうなくらいの、超

イケメンウィンク。

 だからと言って、もう半年以上もウィンクされている私にとってはただ

のまばたきにしか感じない。

 それに今美味しいって言ったでしょ。あれ別に私のお弁当が~とかいう

甘い言葉じゃ無いんですよ。

 何だと思います? ハーイ、シンキングターイム。






 私の唾液(だえき)です。

 ――お食事中の方や、乙女ゲープレイ中の方すみません。


 彼は私の唾液を舐めて喜ぶ変態さんなのです。他にも私の使った爪切り

をペロペロ舐めていたり、私が履いていたブーツの匂いを嗅いでいる時も

ありました。

 ……シナリオに無い部分なんて何してるか、こっちからは分からないの

ですよ……



 ええ、そりゃ現実の男の子だって家じゃ鼻ほじったり、いかがわしい写

真集とかを見て「はぁ……はぁ」したり、そりゃするでしょうし私は別に

気にはしませんよ、そういう事。

 むしろ汚い物大嫌い! エロい話とかマジ勘弁! って男の子がいたら、

逆に疑いますよ、実は影で何かしてるんじゃないかとかね。



 でもこうあからさまに……しかもせっかく綺麗な中庭でお弁当を食べて

る時に、隣で超格好良い彼氏がそんな事してたら引くでしょう?

 ――そういう彼もステキ! とか思えるなら別にいいです。ただ私はそ

う思えなくて……しかもこのルートのエンディングは「結婚してハネムー

ンに行く」と言うおまけエピソードつきなわけで、最低でも十八歳までは

この彼と付き合わなくちゃならないわけです。

「はぁ……マジ辛い……」



「ホノカ?」

「んぇ? んむぐ……」

 彼が私の口の周りを自分のハンカチで拭き、

「女の子が口周り汚してたらみっともないぞ」

 ま……たまに優しいし良いか。

「余計なお世話です」

「そういうツンデレさんなところも可愛いよ……♡」

 今の発言私は気持ち悪いと思いましたが、どうぞお好きなように美形ボ

イスで脳内再生させてください。



「パクッ……♡」

「あ゛」

 私の口周りを拭いたハンカチを……この人今食べました!

「あむぅ……ホノカの味がする……♡」

 本格的にこの人と分かれるルートを探したほうがいいかもしれない。も

しくは過去の自分に間違いを指摘するか……





 読者様の中にタイムマシンをお持ちの方はいらっしゃいませんか。

セーブデータ消せば良いじゃん。とか言うツッコミは無しの方向で……

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