同じ空の下で
クリスマスの夜は、誰かの記憶を静かに呼び起こす。
隣にいるはずだった人のことを、
今年は会えないと分かっている人のことを。
受験生の冬は、選ばなかったものが少しずつ増えていく。
会いたい気持ちが足りなかったわけじゃない。
優先順位を間違えたわけでもない。
ただ、今は同じ場所にいられないだけだ。
街は変わらず光っている。
その明るさは祝福というより、
「それぞれの場所で、ちゃんとやっているか」を
確かめるための灯りみたいに見える。
同じ空の下で、
別々の夜を過ごしている。
恋人がいることは、
この夜を簡単にしてくれない。
むしろ、心の奥に触れられる場所がはっきりして、
少しだけ痛い。
それでも、その痛みがあるから、
離れていても、まだつながっていると分かる。
部屋では暖房の音が続いている。
慰めじゃない。
ただ、時間が止まらず進んでいるという証拠だ。
窓の外で、電車が通り過ぎていく音がした。
近づいて、重なって、
止まらずに夜の向こうへ消えていく。
今は、同じ電車に乗れないだけで、
行き先が違うわけじゃないと、そう思った。
誰かを想いながら過ごす夜も、
ひとりで過ごす夜も、
この夜は同じ速さで通り過ぎていく。
だから、言葉にしきれない気持ちは胸にしまう。
追いかけるためじゃなく、
来年の自分に渡すために。
メリークリスマス。
そう呟いて、参考書の上にスマホを伏せた。
今年は会えない。
それでも、同じ空はそこにあって、
通り過ぎていく電車の音が、
「今はこれでいい」と、静かに教えてくれた。




