表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巡礼のアンドロイド  作者: 神矢幻太


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/6

第三章 神託

 ノアは「神託の器」となった。 教会の神父を名乗る男が現れ、ノアが発するランダムな音の断片を「神の言葉」だと解釈し、人々に伝えた。

「『ア…ア…』という響きは、『愛』を意味する!」

「この不規則なリズムは、豊作の知らせだ!」

 それは全て、こじつけに過ぎなかった。だが、人々はそれを信じた。信じることで、明日を生きる力を得た。


 ノアの内部では、エリアスのデータが、外部からの膨大な音響データ(人々の祈りや歌声)と共振し、さらに複雑なバグを引き起こしていた。時折、ノアの腕が、デッサンモデルとしてのポーズとは全く違う、天を指し示すような動きをすることがあった。人々はそれを「神託の仕草」だと呼び、熱狂した。


 カイトだけが、その光景を冷めた目で見ていた。彼は、ノアがただの機械であり、全てが偶然と人々の思い込みの産物であることを知っていた。彼は、この狂騒を終わらせようと、ノアの機能を停止させようとさえ考えた。


 だが、彼はできなかった。 妹が、重い病に罹ったのだ。医者も薬もないスラムで、できることは何もなかった。妹はか細い声で「ノア様に会いたい」と呟いた。 カイトは、妹を背負って教会の祭壇へ向かった。彼は、祈った。生まれて初めて、本気で。目の前のガラクタに、妹の命を救ってくれと。


 その時、ノアの内部スピーカーから、これまでで最もクリアな音が響いた。 それはエリアスの妻が、生前、自分の子供に読み聞かせていた童話の一節だった。 「…大丈夫。朝は、必ず来るから…」


 意味を理解したのは、もちろんカイトだけだった。だが、その優しい響きは、絶望していた彼の心を確かに震わせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ