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エピローグ
街は静かな朝を迎えていた。
窓から差し込む陽光は柔らかく、まだ新しい季節の香りを運んでいる。
誰もが深呼吸をするように、少しだけ肩の力を抜いた。
遠いどこかで、静かに始まった小さな炎は、今や誰の胸にも灯っていた。
制度に縛られた命の数値ではなく、選ぶ自由の輝きとして。
通りを歩く人々の目には、かつての重圧は映っていない。
見えない鎖は解かれ、新しい未来を信じている。
その中に、一人の影があった。
振り返らず、名を告げることもなく、ただ前へと歩き続ける。
彼女もまた、自らの選択を胸に抱いて。
世界はまだ完璧ではない。
けれど、確かな変化がそこにある。
風はゆっくりと、しかし確実に、再会を運んでいた。
そして、その風は、これからも命の行方を見守り続けるだろう。
この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・事件などには一切関係ありません。