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定命の国  作者:
14/19

無声の刃

廃ビルの深夜、監視端末の光がひとつ、ふたつと消えていった。

通信遮断、無線妨害、そして電子ロックの非常解錠。

静かに、確実に、“死”が足音を立てずに迫ってくる。


「セキュリティ、落ちた……?」


カズキがモニターを睨みながら言った。

アカリが即座に答える。


「いや、違う。これは“落ちた”んじゃない。誰かが落としたのよ。」


その瞬間、警報も鳴らぬまま、廊下の非常扉が静かに開いた。


──Φ群、侵入。


 


真っ黒な防弾スーツに身を包み、声帯遮断装置をつけた抹消部隊が、

機械のような動きで一人、また一人とビル内に侵入する。


通信手段はアイコンタクトと指の動きだけ。

完全な“沈黙の殺し屋”たち。


目的はただひとつ──七瀬ソラの抹消。

他の者については「事故死として処理可能」。


 

セイゴがいち早く侵入に気づいた。


「ッ、来やがったな……!」


愛用の分解式電動ピストルを手に取り、

階段の下から上がってくるΦ群の一人へ向けて照準を合わせる。


しかし──


「……チッ、避けたか」


相手は読んでいた。死角を一つも踏まない訓練通りの動き。


 


アカリとソラは、カズキを守る形で制御室へ後退。

作戦データと告発映像、すべてがここに集まっている。


「今、ここで壊されたら終わりよ!」


「大丈夫、送信装置の予備ルートは確保してある……でも時間が要る」


 


そのとき。


「下がれ、ソラ!」


ユウが叫び、Φ群の一人に飛びかかる。

手にしたのは鉄パイプ──丸腰に等しい武器だった。


だがその眼は、確かに覚悟を帯びていた。


 

「逃げてるだけじゃ、何も変わらない……!」


襲撃者がナイフを抜く。

一瞬のうちに間合いを詰められる。

次の瞬間、ユウの頬に鮮烈な切り傷。


それでも、踏みとどまった。

自分の体で、ソラを守った。


彼の叫びが空気を裂く。


「“選ぶ生”を、俺たちに返せ──!!」


 


その言葉に、ソラの表情が動いた。


「ユウ……」


彼女は迷いなく背後の緊急装置を作動させる。


──ブォン、と音を立てて遮断壁が降りた。


Φ群の半数が分断される。


 


作戦本部は辛うじて守られた。

襲撃を受けた犠牲として、アカリが軽傷、ユウは顔に深い傷を負った。


「……生きてるって、痛いんだな」


彼は笑った。血の滲んだ顔で、まっすぐにソラを見る。


「だからこそ、生きるって意味があるのかもな」


 


ソラは、その手をしっかりと取った。


「ありがとう。私は、絶対にもう負けない。

私の死を“国家の計画”になんか、使わせない」


 


Φ群は撤退。だが“次”はもっと大きく、もっと確実に来る。

国家は、この計画の“最終段階”に入っていた。

この物語はフィクションです。

実在の人物・団体・事件などには一切関係ありません。

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