表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
定命の国  作者:
13/19

通知者

決行日まで、残り4日。


作戦本部の空気は、目に見えない“ひび割れ”を抱えていた。

藤堂ミツルの突然の登場と、義道の手書きノート。


その内容自体は矛盾がなかった。

義道が残した思想は、ソラの考えと完全に一致していたし、

ユウもその理念に強く共鳴していた。


──だが、綺麗すぎることが不自然だった。



沈黙の天才カズキは、藤堂の公務員証と行動ログを独自に解析していた。

義道が焼かれた時間帯、彼のGPSログは“通信遮断エリア”にあった。

だがそれは国家の公安職員に限定された帯域でもあった。


つまり、

「“追放された記録局職員”が、なぜ国家専用帯域にアクセスできたのか?」


矛盾が、静かに浮かび上がっていた。


それでも藤堂はチーム内で自然に振る舞っていた。

技術にも精通しており、義道と過去にやり取りしていた電子記録も本物だった。


アカリもセイゴも口には出さなかったが、

「信用できないが、利用できる」という一致した了解がそこにあった。



その夜、作戦本部に届いた一本の封書。

一般郵送とは違い、国家からの“個別特急”ルートで届いたそれには、

差出人の記録が存在しなかった。


中身は一枚の紙。


『七瀬ソラ 様


本状を以て、あなたに対し

定命制度適用者としての登録が完了したことを通知いたします。

登録日:令和X年X月X日

処理日:式典当日


国家総務局 定命執行管理課』


部屋の空気が止まる。


「……これ、式典の日。つまり、私が“処理対象”にされたってこと?」


ユウはすぐさま立ち上がる。「……ふざけてるのか」


「いや、わかってる。これは“警告”よ。

──“放送に割り込めば、その場で処理する”っていうね」


それは、制度にとって象徴的な警告だった。

“制度を否定する者は、その制度によって粛清される”という、見せしめ。



「……あいつら、ここまでやんのか……」


「いや、“ここまで”やるから、国家なんだよ」

アカリの冷静な言葉に、誰も反論できなかった。


それでも動く理由

その夜、ユウはソラとふたりだけで屋上にいた。


「……怖くないのか?」


「怖いよ。でもね……私は、もう死んでるのよ。

あの夜、母さんを“誤通知”で殺された時から」


彼女の瞳は静かに燃えていた。


「だったら最後くらい、自分の意思で生きたいじゃない。

“生きてるうちに、誰かの未来を変える”って、思ってみたいの」


ユウはその言葉を、黙って受け止めた。


そして──初めて、彼女の手を取った。


国家の対応強化

同時刻、国家公安庁では新たな指令が下されていた。


「作戦決行の前に、彼らを“事故”として処理せよ。

とくに七瀬ソラ──告発者の象徴化を避けるため、

記録を残さず消去せよ。」


コードネーム:“無声の執行”

担当部隊:公安特別課・抹消班《Φファイ・グループ

この物語はフィクションです。

実在の人物・団体・事件などには一切関係ありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ