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定命の国  作者:
11/19

声を束ねる

決行日まで、残り5日。


廃ビルの地下にある元印刷室──そこが彼らの“作戦本部”になった。

コンクリ壁には古い記事の断片、監視カメラの死角マップ、ネット構造図が貼られ、

まるで旧世紀のレジスタンスのようだった。


そこに一人、また一人と加わっていく。


【柊アカリ】

「私は“命の終わらせ方”を学んできた。でも、これは医療じゃない。ただの処分よ。」


アカリは国家指定医療大学に首席合格した逸材だった。

だが祖母の通知に逆らえず、処理に立ち会わされた夜から、彼女の世界は変わった。


「あの時、私は“生かす医者”から、“殺しを補助する係”にされたの。」


それ以来、彼女は匿名で制度批判を投稿し続けていた。

今、顔を出してでも動こうと決めたのは──「黙ってたら、また次を殺すから」。


【葉山セイゴ】

配送業の合間、彼は通知の“異常”に気づいた。

父の処理通知書の発行日が、“誕生日より3日早い”。

つまり、まだ69歳だった。


「間違えたのか? それとも、試してんのか?」


抗議すれば拘束され、黙れば父が殺される。

そのどちらも選ばず、彼は逃げた。そして今、武器ではなく“証拠”を選んだ。


【遠野カズキ】

カズキは言葉が少ない。

が、彼の持つ端末にはORPHEUSの管理層プロトコルが走っていた。


「これがオルフェウスの“心臓”だよ。

──今なら、国家の視覚と聴覚を、一時的に切り落とせる」


その瞬間、全員が彼の方を見た。


ソラは小さく笑った。

「……“神の目”を一度、潰すってことね」



だが国家も動いていた。


ある中学では、15歳の生徒が**「定命制度に関する自由研究」**を提出した翌日、

その家庭に“仮通知書”が届いた。

発行元は不明。だが、そこにははっきりと「この発言を公的に否定しなければ、家族の保護は保証されない」と書かれていた。


別の地区では、視聴中に「問題行動の多い世帯」にだけ、

突如「静かなアラーム音」が流れた。


それは──“次の対象”であることを、知らせる鐘だった。



「もう映像だけじゃダメ」

「制度に疑問を抱いた“市民の連鎖”が必要よ」


彼女が提案したのは、“告発放送”と同時に、各都市で小規模な蜂起を誘発する計画だった。

仕掛けは簡単。

すでにKATASTROPHE内で繋がっている数百人に「“死の不在証明”」を呼びかける。


──死んだはずの人物の生存記録を、全員一斉に提出させる。


それは、国家データベースにとって**最大の“否定”**となる。



この物語はフィクションです。

実在の人物・団体・事件などには一切関係ありません。

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