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プロローグ
西暦2075年。
日本では「定命法」が完全施行されて5年が経過していた。
法律第114条、通称《定命法》。
それは、すべての国民に寿命の上限を70歳と定める法律である。
70歳を迎えた国民は、例外なく「定命日」を通知され、国営の安楽施設で静かに“退場”する。
それは祝福され、感謝され、そして何より「当然視」されるものとして社会に浸透していた。
メディアは定命者を「未来への贈り物」と讃え、
子どもたちは定命の日に花を持って祖父母を送り出した。
戦争もない。
失業もない。
経済は安定し、子育て支援も手厚い。
70歳以上の医療・年金・介護に使われていた莫大な資金は、すべて次世代に分配された。
そして社会は言った。
**「これは進化だ」**と。
だが、そう思わない者もいた。
この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・事件などには一切関係ありません。