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悪役令嬢ですが、シナリオを順守することに決めました  作者: 飴屋


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98/108

97,名前

「ソフィア様を探しているとき、旧校舎で教えてもらったんです。名前を呼びあうような友達になりたいのに、理由があって意地悪してしまったと泣いていた女の子がいたって」


それって。


エリックの顔が思い浮かんだ。

まだエリックに出会ったばかりのころ。

大泣きしているときに、そんなことを言ったかも知れない。


「そのとき、寮や家の自室ではなく、旧校舎まで行って泣くのはどうしてだろうって、不思議に思ったんです。…でも、よく考えてみたら、そうなんですよね」


そっと、ティファニーちゃんは私の手を取った。


「学校ではいつも人に囲まれていて、例え自室でも、泣き声が外に漏れてしまったら、絶対に誰かが様子を見に来る。…とても身分の高い方ほど、一人きりになって秘密の理由で泣くことが出来ない」


…。

沈黙するのも、肯定したのと同じこと。

だけど、言い訳も思い付かない。


「…あの用務員か。その男が…?」

「っ、エリックは、本当に何もっ」


言いかけて、しまったと思った。

思わず、名前を出してしまった!

ティファニーちゃんが、慌てる私をなだめるように手を強く握った。


「エリック…? …あぁ、いたな。確か、時計塔の管理人の名前が、エリックだったはずだ」


ビクター様のその言葉に、一瞬、頭の中が真っ白になった。


「…管理人? そんなはずは」


あり得ない。だって、


「…それは、違うと思います」

「…エリック・スミスではないと? しかし、学校関係者にエリックと言う名の男は、他にはいなかったはずだ」


エリック・スミス


それは、会って二回目で名乗ってくれた名前だ。

でも、違う。


「だって、この時計塔の扉を開けられるのは、ティファニーちゃんだけなんです」


二人が目を丸くした。




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