96,魔王様2
「ソフィア、こっちに」
ビクター様が私を呼んだ。
確かに、魔王様は後ずさったせいで、私を手放してしまっている。
ネタバレのダメージが大きいのか、剣も下ろして力無く項垂れていた。
どうすれば良いのか、迷う。
魔王様を助けるには、どちらにいるほうがいいのだろう。
「行け」
魔王様が疲れたように言った。
それでも立ったままの私を、ビクター様が引き寄せた。
ビクター様は一度私を抱き締めると、安心したように息を吐いた。
「詳しい話は後で聞くが、君の様子がおかしかったのは、その男の復活の…予兆みたいなものを君が察知していたから、と言うことか?」
「…そんな感じです」
今の会話だけで、そうまとめるんですか!?
さすがいつも冷静なビクター様だ。
「…他に、知っている者は?」
「一人だけ。…でも、全部は話してません。その方は、私が魔王様を討伐すると思って、助けてくれたんです」
共犯者じゃないです!
そう言うと、ビクター様は頷いた。
「…それは誰だったんだ?」
ビクター様のことは信頼できる。
でも、ここで名前を言えるわけがない。
私は、首を振った。
だって無実だって分かっていても、私と繋がりがあった、それだけで、学校側が解雇したら。
魔王復活を知っていて、それをあえて隠して、魔王討伐を阻止しようとしていた。
私は覚悟の上だったけど、エリックは違うのだから。
「ソフィア様」
ティファニーちゃんが、わたしの名前を呼んだ。
「…ティファ…」
…って、あれ。
なんで、家名じゃなくて、名前で呼んでいるんだろう。
いつの間に?
驚く私に、ティファニーちゃんは微笑んだ。
「私、ソフィア様を見かけたとき、賭けに出たんです」
「かけ?」
「旧校舎で泣いてた女の子って、やっぱりソフィア様だったんですね」
…?




