91,対決
魔王様から魔法石を奪った。
でも、狭い時計塔の中に逃げ場はない。
時計の歯車が邪魔をしてくれるけれど、魔法で簡単に壊せるし、そもそもティファニーちゃんではない人間が魔王様の攻撃を避けられるとは思えない。
「…っく!」
頭を押さえながら、魔王様が私へと手を伸ばす。
あと少しで捕まる。そんなときに、炎が上がった。
「…っ!」
「ソフィア。こっちだ!」
ビクター様の炎が魔王様の手にやけどを負わせ、動きを止めた。
その隙に、私は階段のティファニーちゃんの元へと走った。
「ソフィア様! おけがは?!」
「平気よ!」
ティファニーちゃんは私の全身を見て、大きく息を吐いた。
「良かった…」
「ソフィア、ティファニー。今のうちに、逃げろ」
ビクター様が私たちを庇うように前に出て、剣を構える。ティファニーちゃんも、そっと私の半歩前に出てくれた。
私は大事な魔法石を抱き締めて、次の展開を待つ。
火傷をした手を見ていた魔王様は、ゆっくりと顔を上げた。
こちらを見て、…微笑んだ?
このタイミングで魔法石を奪うのも、ビクター様が魔王様に剣を向けるのも、シナリオ通りだ。
ゲームではこのシーンは、魔王様のアップはなかったから知らなかったけど、ここで微笑んでいたらしい。
悪役の蔑むような笑みというよりも、もっと柔らかな笑みだった。
「その石を返してもらおうか」
魔王様が手をかざす。
すると、剣が現れた。
「…魔法で剣を…?」
一瞬だけだったけど魔法石を手にした魔王様は、魔力と一緒に失ってしまった記憶を取り戻すことが出来た。
少しだけとはいえ、封印された時の記憶が戻るのは不安だけど、このままだと混乱してただ暴れまわってしまう。
過去の記憶が戻らなければ、魔王様は大事な時計塔を破壊してしまうのだ。
うん。
ちゃんとシナリオ通りで、これで国の滅亡は防げた。
魔王様の記憶が戻れば、大丈夫。
この後、またビクター様と魔王様は戦う。
勝敗が分かっていても、実際の戦う様子は見ていて怖い!
二人がにらみ合い、剣を構えた。




