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悪役令嬢ですが、シナリオを順守することに決めました  作者: 飴屋


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89/107

88,記憶

「勝手に入って申し訳ありません。具合が悪いようですが、大丈夫ですか」


ビクター様が呼び掛けた。

いつもの礼儀正しい、丁寧な口調だ。


私は、叫びだしたい気持ちを押さえた。

だって、あのシーンを生で見れるのだ。

画面越しだと分からなかったけど、ビクター様は剣に手を添えてる。ってことは、この時点でビクター様はこの人が魔王だと疑っていたと言うことで…!!


…空気。空気。空気。


私がここにいるのはイレギュラーなのだ。

変な影響を出さないように、じっとする。


声をかけられ、魔王様がビクター様の顔を見る。


「ロバート、か?」


その名を出した途端、ビクター様の顔が険しくなった。


「いいえ。違います」

「いや、何を…くっ!」


魔王様が寝台から起き上がろうとして、また頭を押さえる。

ビクター様の後ろで、心配そうなティファニーちゃん。


「俺は、ビクター。ロバートではないし、彼女もパトリシアではない」


硬い声で、はっきりと告げる。

しかし、魔王様は聞いていなかった。

天井を見上げ、目を眇める。

見ているのは、天井よりももっと上。


「…そこか」


いまいましそうに顔を歪めると、魔王様はゆっくりと立ち上がった。


「待て!」


ビクター様が、魔王様を制止する。

剣を引き抜き、構えた。

朝練帰りだったビクター様が鞘から抜いたのは、真剣。薄暗い部屋の中、わずかな光を反射してキラリと光った。


「…」


突然、剣を向けられても、魔王様はうっとうしいものを見るような目をしただけだった。


「一つ聞きたい。お前は、ロバート王とパトリシア妃が戦った…魔王、なのか?」


神話の中の架空の存在だと思っていた魔王が、実際に現れた。


ビクター様の質問に、ティファニーちゃんも息を飲む。


あり得ないと笑い飛ばすには、この状況はおかしすぎた。


「…ロバート王、パトリシア…妃?」


魔王様は不思議そうにそう言うと、また頭をおさえる。


「…まずは取り戻さないと」


そして、上を見る。


「! 待て!」


魔王様の視線の先にあるものが分かったのだろう。ビクター様は、剣を持つ手に力を込めた。

そのまま斬りかかる。


「!」


結果が分かっていても怖いっ!


思わず目を閉じてしまったその間に、ガタンと、大きな音がした。ビクター様が倒れていた。


「ビクター様!」


ティファニーちゃんが叫ぶ。


「…邪魔をするな」


魔王様はそう言うと、部屋を出て行った。


「大丈夫ですか、ビクター様!」


ティファニーちゃんがビクター様に駆け寄る。


「…あぁ。平気だ」


うぅっ。

ゲームでは、ほんの一瞬。ほとんど省略されたシーンだったけど、こうして倒れたビクター様を見るのは辛い。

でも、怪我はしていないはず。

復活して間もない魔王様は、まだ、本調子ではないから、魔法もあまり使えない。


「…あいつの目的は、魔法石だ」

「えっ?」


ビクター様は、一度大きく息を吐き出すと言った。


「あの石を使われたら…」


魔法石は、使う人の魔力の足しになる。

それが悪意ある者の手に渡れば、最悪の結果が訪れてしまう。


「俺が食い止める。ティファニー、君は先生方にこの事を伝えてくれ」


真剣なビクター様の表情だ。

ここで魔王様が力をつければ、国が破滅に向かうのは想像に難くない。だけれど、今の一瞬でもビクター様は魔王様に負けた。

それでも、ティファニーちゃんを逃がすため、そう決断したビクター様に、ティファニーちゃんは言うのだ。


いいえ。置いていけません。一緒に戦います!と。


「はい、分かりました!」


…え。



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