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悪役令嬢ですが、シナリオを順守することに決めました  作者: 飴屋


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87,目覚め

素朴な家具が置かれた部屋だった。

机も椅子も、寝台も。

ただ、よく見ればわかる。

デザインが、最近のものではないのだ。


どの時代も流行や流通している素材、道具があって、特別な知識がなくても、なんとなく古い物は分かる。


そして、ここの調度品のデザインは全てが古い。


王家も公爵家も、古くからある調度品はたくさんあるけど、ここのはさらに古いのだ。


その異様さに、ビクター様も気付いたのだろう。


「ソフィア。ティファニー。上の階に戻ろう」


警戒しながら、ビクター様は私たちに指示を出す。


「ビクター様。その方は…」

「分からない」


首を振るビクター様に、ティファニーちゃんは真っ青になった。


「…先生を呼んで来ます!」


ティファニーちゃんが駆け出そうとしたとき、黒にゃんこ様が寝台に飛び乗る。


「…っ」


ピクリと寝台の上の男性が動いた。


「!」


物語の通りに、魔王様が目を覚ました。





「…っあ」


頭を押さえながら、魔王様は体を起こした。

その動きに驚いて、黒にゃんこ様が寝台から飛び降りる。

長い黒髪が、さらりと顔を隠す。

具合が悪そうなその様子に、ティファニーちゃんは心配そうな顔。

だけど、ビクター様が前に出てティファニーちゃんを軽く押さえる。


キィ、カタン。コトン。


静まり返った地下室で、時計の歯車の廻る音がよく聴こえた。


「…」


魔王様はゆっくりと顔を上げた。

その瞳の色は、黒。

もちろんだけど、ゲームと同じお顔だ。

切れ長の憂いを帯びた目に、端正な顔立ち。少し神経質そうな硬い表情だけど、二周目で、ティファニーちゃんに微笑みかけるときは照れ笑いみたいな感じで…!


…危ない。

変な声が出るところだった。


まだ、魔王様は目が覚めたばかりでぼんやり中。

ビクター様は、警戒しながら様子を窺っている。


私は、なるべく邪魔をしないように空気にならなくてはいけなかった!!


「…ここは…」


頭を振って、魔王様は辺りを見回した。

そして、少し離れたところにいる二人を見つけるのだ。


「! パトリシア…?」


ビクター様が、剣に手を添えた。



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