86,階段を降りるとそこは
「あっ」
みんなで地下に続く階段を見ていると、黒にゃんこ様が時計塔のなかに入ってきた。
念入りに匂いをかいで、くるりと辺りを見渡すと、階段を降りていく。
「わっ、私、捕まえてきます!」
ティファニーちゃんが急いで階段に向かう。
「いや…」
こういった時のティファニーちゃんは、動きが素早い。
多分、止められるのが分かっているから、あえて話を聞かないのだろう。
「俺も見てくる。ソフィアは…」
「まぁ、ビクター様。私も行きますわ」
ここまで来たら、物語がどう動くかわからない。外に出た瞬間、教師に見つかるのは避けたい!
私は、ニッコリと笑うと階段を降りた。
「…分かった」
ビクター様も、諦めたようについてくる。
「…」
地下に続く階段、と言っても一階分もない。天井が低いその部屋には、直ぐにたどり着ける。
「ティファニー、猫は見つかったか?」
上の階の窓から反射させた明かりだけの薄暗い部屋の中、ティファニーちゃんは黒にゃんこ様を抱っこして立ち尽くしていた。
「…あ、ビクター様…」
「…? どうした?」
部屋の中には、簡素な机と椅子。
そして、大きな寝台。
「…管理人の部屋…?」
その寝台の上には、一人の男性が眠っていた。
「いや…」
口にして、ビクター様も違和感に気付いたのだろう。
あんなに大きな鐘の音がしたのに、いまだに眠り続けている状況。
そして、寒くて埃っぽいこの部屋。
「…すみません」
ビクター様は、ティファニーちゃんと私を下がらせて、男性の枕元に立った。
そっと、呼び掛けるも男性は目を覚まさない。
…大丈夫。
だって、鐘は鳴ったもの。
答えを知っている私はつい先回りしたくなるけど、ここは我慢だ。
「ビクター様。その方は、大丈夫でしょうか。具合でも…?」
ティファニーちゃんが心配そうに聞く。
すると、黒にゃんこ様がティファニーちゃんの手からすると降りた。




