85,時計塔内部
時間じゃないのに、鐘が鳴った。
いつもの時を告げる澄んだ音とは全く違う、誰かが力任せに鐘を鳴らしたかのような、濁った音だった。
まるで、危険を知らせるような、人を不安にさせる音だ。
「わ、私のせいでしょうか…!?」
突然の鐘の音に驚いて立ち止まったティファニーちゃんは、真っ青な顔で言った。
「…いや、そんなことは…」
ビクター様も困り顔。
かなりうるさい音がすぐ側で聴こえているんだから、無理もない。
「と、取りあえず、中を見て来ます!」
「…分かった。俺も行こう」
ちらりと私を見ると、ビクター様はティファニーちゃんを追って行った。
二人が時計塔の中に完全に入ると、鐘はピタリと止まった。
ただ音の余韻がする。
私も、ゆっくり時計塔の中へと足を踏み入れた。
…でも、上がらなくてもわかる。
ティファニーちゃんは、時計塔の三階部分の窓まで急いだ。
時計塔の異変を察し、教師や用務員さんが来てしまえば、ハンカチを探すどころではなくなってしまう。
それに、きっかけをつくってしまったとを、モーリスやリンジーちゃんが気にしてしまう だろう。
それらを避けるために、ハンカチをこっそりと回収することにしたのだ。
その瞬間をビクター様に見とがめられるも、ティファニーちゃんは、ハンカチを無事に回収。
そして、二人は階段を降りてくる。
「…あの、すみません」
「いや、取りあえず外に出よう」
階段を降りてくる二人。
私は、邪魔にならないようにそっと壁際に寄った。
あと三段で一階に着くと言うときだった。
「…ん?」
ビクター様が、ゲームと同じ角度で立ち止まる。
「ど、どうしましたか?」
ティファニーちゃんが恐る恐る聞くと、ビクター様は前を指差した。
「地下まで続いているんだな」
時計のある上へと続く階段は一階で終わるけど、 また奥に、地下へと続く階段が見えた。
「はい。そうみたいですね」
ビクター様の指をたどって、ティファニーちゃんが答える。
「時計塔に、地下室は必要か?」
「え?」
良かった。
ビクター様は、ゲームと同じように行動してくれた。




