79,苦しい演技
「……」
失敗してたなんて…。
ティファニーちゃんはちょっとうっかりしているところもあるけれど、洞察力、観察力、行動力が他の人よりも並外れて優れている。
私の嘘なんて、簡単に見破られてしまう。
だから、何度も何度も演技を練習したし、ゲームのシーン以外ではティファニーちゃんとの接触は避けてきた。
それなのに。
「ソフィア様は、誰かに指示されていたんですよね?」
「え…?」
なんで?
ティファニーちゃんの首もとに、あのネックレスのチェーンが見えた。
大事なことはビクター様の好感度で、そして今日、ビクター様に会えるかどうかだ。
「なにを言っているのか、分からないわ」
私は白を切った。
苦しい演技で、やましいことがある人しか言わない言葉だ。
「ソフィア様…」
ティファニーちゃんは、悲しそうに言った。
…って、だめだ。
もう時間がない。
私が上手く演じきれなかったせいで、物語が変わってしまうことだけは、避けなければ。
「わたくし、外の空気を吸いたいの」
寮の部屋に戻るとティファニーちゃんが付いてきてしまいそうだったので、外に出る!
「…ご一緒しても良いですか?」
なぜか、ティファニーちゃんは食い下がった。
「お好きになさい」
もういい。
このまま、時計塔に行こう。
魔王様が復活すれば、きっと私のことなんて気にする余裕はなくなるはずだ。




