表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢ですが、シナリオを順守することに決めました  作者: 飴屋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/107

74,調査

足音は二人分だった。

王子と一緒に行動していたらしいティファニー・アンブローズは、まっすぐな目で言った。

ソフィアの話でよく聞かされていたが、間近で見る虹色の瞳は、確かに見る角度によって色を変えていた。

美しい宝石のようでとても神秘的なの、と褒めていたことを思い出す。


「旧校舎の周りでは、見ませんでしたか? 女子生徒さんとか…」


なるほど。

これも、ソフィアがよく言っている「物語の裏側」なのだろう。


エリックは、表情を変えないように注意しながら思った。


三月のガーデンパーティのとき、王子は調べあげたソフィアの『悪行』を、並べ立てるらしい。

おそらくこの質問も、断罪するための調査の一環なのだろう。


誰もいない旧校舎内で、公爵令嬢が男と会っていた。


婚約者がいる貴族の子女にとって、かなりの醜聞だ。

それだけで、婚約破棄の理由としては十分だろう。


ソフィアはそれでも良いと笑うかもしれないが、そんな理由であの少女が貶められるのは我慢ならない。


「女子生徒さん、ですか?」

「はい」


ゆっくりと考えるふりをしながら答えた。


「あぁ。そう言えば。この前、女の子を見ましたね」


その答えに、目の前の二人の生徒が息を飲んだ。




『あのね、エリック。ティファニーちゃんも攻略対象者の人たちも、本っ当にすごくてね。兼ね備えている能力が他の人たちと桁違いなの!』


悪役令嬢の演技を練習しているとき、ソフィアは言った。

あまりにも念入りに練習しているから、もう十分じゃないのか、そう言ったときのことだ。


『だから、下手な演技だと直ぐに気付かれちゃうから、たくさん練習しないと!! 本当にすごいんだから!!』




ソフィアの話を参考に、言葉を選びながら続けた。


「級友に意地悪をしてしまったと、嘆き悲しんで大泣きしてました」


鋭い洞察力があるのなら、嘘をつかなければいい。

これなら、嘘はついていない。

二人は信じたようだ。


「大泣き…」

「えぇ。一人で泣ける場所を探して、ここに来たと」


帽子を被り直すふりをして、窓の外を見る。

ソフィアの姿は見えなかった。


「これは、ここだけの話にしてください。本人も、もう来ないと言ってましたので」


そう言うと、アンブローズは真面目な顔で頷いた。


「はい。秘密にします」


アンブローズが先に答えてしまってから、王子もまた少し複雑そうに答えた。


「わかりました。…ですが、他に生徒が立ち入り禁止区域に入り込んで、作業のお邪魔をするようでしたら、どうぞ生徒会や教師にご一報ください」

「えぇ。そうさせてもらいます」


礼儀正しく、作業の邪魔をした詫びを言って、王子は帰ろうとした。

しかし、アンブローズが少し悩んでから、振り返った。


「あの…」

「はい?」

「その女子生徒さんは、お友達と仲直り出来たんでしょうか」


心配そうな顔だった。

その生徒が悪役令嬢ではないかと疑っているわけではなく、本当に心配しているのだろう。

こんな寂しいところで泣くことを選んだ、一人の女の子を。


「…俺には、分かりません」


申し訳なさそうに言えば、アンブローズは我にかえったように慌てて言った。


「そ、そうですよね。すみません!」


ティファニーちゃんは、みんなを救ってくれる。


ふと、そんなソフィアの声が思い出された。


「…本当は、名前で呼び合う友だちになりたかった」

「え?」

「なんだか複雑な立場らしく、友だちになりたいのになれない、そんなことを言っていましたね」


この学校は、貴族の世界の縮尺図のようなもの。

家や親の関係が、子供にも影響する。

好きになった人が、親の政敵の子供だった。

そんな話は山ほど聞く。

王子も心当たりはいくつかあるのか、眉間にシワを寄せていた。


「あぁ。しゃべりすぎました。これ以上は」

「はい。すみません。忘れ…はしませんが、秘密にします!」


なんだか、よく似た誰かを思い出しそうな真面目な顔で、アンブローズは言った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ