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悪役令嬢ですが、シナリオを順守することに決めました  作者: 飴屋


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70,二月のイベント

二月は言わずと知れたイベントだ!


「チョコレート祭り! ゲームは終盤に差し掛かっていて、少し真面目な雰囲気になりつつあるんだけど、今日だけは別なの!」


私は、旧校舎のいつもの教室で力説した。

一応、正式名称やこの国なりの由来もあるにはあるけど、要はバレンタインデーだ。


「チョコレート…。あぁ、女子生徒が男子生徒にチョコを贈る、あの?」

「そう。薔薇の朝露のおまじないが上手くいかなかった子達の再挑戦の場、でもある」


今日は、みんなちょっと落ち着かない雰囲気だった。


「ソフィアは、王子に贈ったのか?」


放課後に旧校舎に直行したからか、エリックが心配そうに聞いてくれた。


「ううん。渡してない。ビクター様は今、生徒会の引き継ぎが忙しくて時間が取れないって、前に言われたから…」

「でも、ティファニー・アンブローズは渡すんだろう?」

「学校自体にはいるから、渡せるよ」


ただソフィアの場合は、時間がかかりそうだから、と断られただけだ。

なにせ、去年のときは、お菓子職人を呼んで目の前でチョコレートフォンデュだったので。

ビクター様の対応は正しい。


「その場面は、確認しなくていいのか?」


ゲームの進行状況や攻略対象者によって、パターンは色々ある。

でもこのイベントは、ラストに向かう前のちょっとした息抜きのようなものなので、確認は必要ない。

ティファニーちゃんがどう動こうと、ラストに影響はない。


「う…うん。もう大丈夫 。むしろ、私がそばにいたほうが、また余計な邪魔をしちゃいそうだし」


ちょっと、言い訳っぽいかな。


「えっとね。今日のティファニーちゃんは忙しいの!」


ごまかすために、私はいつものようにゲームの話をした。


「攻略対象者のみんなとリンジーちゃんに、チョコレートを配るんだけどね」


ちなみに、チョコレートもティファニーちゃんの手作りだ。

手作りクッキーに、溶かしたチョコレートをかけたものだった。


「ワンコ先輩は、三年生。もうこの時期は、授業が少なくなってて、学校にいないことも多い。他の攻略対象者も違うクラスだったり、移動してて見つけるのに大変だったり」


ティファニーちゃんの性格からして、仲の良い友だちにも贈りたいはず。

学校の休み時間と言う時間制限のなか、知り合い全員に会うのは、なかなか大変だ。


「だから、私が校内にいて、ティファニーちゃんが避けるために遠回りしたらそれだけで、迷惑かけちゃうなぁって思ってね…」


ティファニーちゃんにも、この日を楽しんでもらいたい。


その気持ちも、もちろんある。


このイベントも、好きだったシーンがいくつもあった。けど、それを見ることよりも優先したいことが出来てしまったのだ。

だから今日は、ティファニーちゃんの動きは追わない。


「そっか。まぁ、ソフィアがそれでいいなら」

「…この次は」


私は、エリックが淹れてくれた紅茶をゆっくりと味わってから言った。


「この次のイベントは、魔王様復活。なの」


ゲームも終盤に差し掛かった。

ティファニーちゃんが、無事に攻略対象者の好感度を上げられてほっとした気持ちが大きいけど、もう少しこのままでいたかった、っていう気持ちもある。


「そっか。俺に手伝えることはあるか?」


いつものようにエリックが言った。


「ありがとう。一つだけ、お願いしていい?」

「おぅ」

「大雪が降った次の日の朝、もしもワンコ先輩とハーリィとマックス。あとマナック・メーテルリンクが時計塔の近くにいたら、止めてほしい」

「…止めるのか?」

「うん。ビクター様とティファニーちゃんだけに、魔王様と対峙してほしいの」

「わかった」


私は、当日の流れを簡単に話した。


「…」


必要なことは全て話し終わった。

次になんて言っていいか、わからない。

クラス中に漂う甘い匂いに押されてここまで来たけど、やっぱりチョコレートは渡せない…かな。


「でも、次が魔王復活か…」


エリックが、考え込むように言った。


「うん…」

「ソフィアの悪役としての出番はもうないんだよな?」

「そうだね。ゲームの中では、もう出番無し。次は、三月の卒業パーティー」


三年生の卒業を祝うガーデンパーティーで断罪されるのだ。


「…ちょっと、おかしくないか?」



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