67,エリックの一人言
「魔王かぁ。全く、厄介な存在だよなー」
肩を落として帰っていくソフィアを見ながら、エリックは呟いた。
魔王さえいなければ、誰も傷つくことはなかったと言うのに…。
『ビクター様がね、不思議なことを言ってたの。魔王は存在しないって』
以前、ソフィアが言っていたことを思い出す。
『よく分からなかったけど、魔物も、臣下もいないのだから、魔王はいるわけない…みたいな』
そのときのソフィアは眉間に皺を寄せて、考え込んでいた。
『いないって思ってるのに、突然復活したら、ビクター様驚かないかな? もう少し、魔王様の話をするべきかな。どう思う? エリック』
その時、自分は何と答えたのだったか。
確か、ゲームでは普通に対峙していたのなら、そんなに気にすることはない。とかなんとか。
あの王子はなかなかに聡そうだ。
なら、気付くよな?
自分の婚約者の異変に。
念のために、ダンスの練習をするように仕向けた。
『ダンスは、武術と同じ。相手のことがよく分かるの!』
練習と、本番。そして、ティファニー・アンブローズに嫌がらせをした後のダンス。
無事にダンスを終えたと本人が思っていても、絶対に違ったはずなのだ。
心の底から楽しんだダンスと、ただ義務のように終わらせるために踊ったダンスの違いに、気付かないはずがない。
もしも、気付かないようだったら…。
「…婚約破棄か…」




