61,舞踏会の日
ついに来た。
今日は、舞踏会の日。
私は前日から家に帰っている。
そして、使用人たちに悪役令嬢らしくわがままや文句を言いつつ、ドレスを着せてもらって、髪やメイクもやってもらった。
特に指定したわけではないのに、やっぱり髪型はゲームと同じ感じになった。
アクセサリーは、大きなダイヤモンドのネックレスとイヤリング。
髪は編み込んで後ろでまとめた。
鮮やかな赤いドレスの長い裾をさばきつつ、この日のために練習を重ねた細いヒールの靴で歩く。
…すっごくすっごく悩んで、ドレスの内側の小さな隙間に懐中時計を隠した。
この格好で旧校舎に行ったら目立ってしまうので、今日はエリックには会えないから、お守りだ。
頑張って着飾った私の姿を見たら、なんて言うんだろ。
少しでいいから、見惚れたりとか…。
「ソフィアお嬢様、お時間です」
「! …えぇ。分かったわ」
迎えの馬車が来たようだ。
今日は、ビクター様のお迎えはない。
生徒会長は、こんな日も忙しいらしい。
ビクター様が迎えに来れないと知ったとき、一応はわがまま令嬢らしく拗ねて見せたけど、私としてはほっとしている。
素直に玄関に向かおうとすると、なぜか呼びに来た使用人が驚いていた。
…そうだった。
ソフィアなら、まだ髪型が決まらないとか、やっぱり他の口紅が良いとかごねるところだった。
その演技を忘れるなんて、やっぱり緊張しているみたい。
「…」
気を付けないとだなぁ。
私は、ポケットの上から懐中時計を触った。




