55,分岐点
「…ティファニー、今日も図書室?」
「うん。調べたいことがあって」
「そっかぁ」
教室で、そんな声が聞こえてきて、私は気付いた。
ティファニーちゃん、ルートから少しずれてる…!?
誕生日の贈り物をもらってからのティファニーちゃんには、選択肢がいくつかあった。
今まで以上に、勉強や友情を深めることに力を注ぐか否か。
真面目なティファニーちゃん。
みんなの期待に応えるべく頑張る。
…じゃ、駄目なんだ…。
生徒会のお仕事や、理科部の手伝い、ハーリィやマックス、リンジーたちとのお茶会。
それらに力を入れてはいけない。
彼らとの仲を深めるのに時間を使うのが、今までの正解だったけど、今回は違う。
舞踏会の準備をしなくてはっ!
ダンスとは無縁の生活を送ってきたティファニーちゃんは、もちろんダンスを踊れない。
ダンスの授業では、パートナー役の男子生徒の足を何度も踏んでいた。
優しい生徒だったので、許してもらえたけど、ティファニーちゃんには苦手意識がしっかりと植え付けられてしまい…。
実践形式の試験でなんとか合格すると、それ以降は練習しなくなってしまったようだ。
ティファニーちゃんとしては、ダンスが必要な人生を送るとは考えてもいないので、これ以上練習する必要はない、と思っているんだろう。
年末の舞踏会も、ただ参加するだけのつもりのようだ。
でも、それでは駄目なんだ…!
空き教室で、掃除の時間の裏庭で、早朝の渡り廊下で、せっせっと練習しなければ、舞踏会でビクター様とダンスは踊れない。
イベントが起こらない。
ただ、悪役令嬢にドレスを汚されて、泣きながら自室に戻るだけになってしまう。
何度も言う。絶対に駄目!!
「ソフィア様? どうされましたか?」
私が難しい顔をしていたからか、クレアが心配そうに聞いてくれた。
「…何でもないわ」
…ティファニーちゃんと友だちなら、一緒に練習しよう、って誘えるけれどなぁ。
でも、そもそもダンスには、相手役の男の子が必要。
初心者なら音楽も欲しい。
なかなか、ハードルが高いのだ…。
…ビクター様なら、初心者の子でも上手くリードして踊ってくれるだろうけどなぁ。
足を踏んだ経験から、ティファニーちゃんが遠慮してしまうだろう。
ティファニーちゃんが踊りたくなるように仕向けなくてはならない。
「…」
帰りの支度をしながら、考える。
ダンス…。




