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悪役令嬢ですが、シナリオを順守することに決めました  作者: 飴屋


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47,実践練習

目の前に立つエリックを見ると、彼は笑ってワイングラスに水差しの水を入れた。


「ちょっと、あっためる?」

「本番はホットワインか?」


違う。

冷たそうなものだった。

と言うか、ホットだとそれはそれで問題があるのでは…。


「別に、この水もたいして冷たくはないから、気にするな」

「じゃ、じゃあ、暖房を付けよう! あの舞踏会だって、ついてたんじゃないかな。ついてなくても、みんなの熱気? でホカホカかも」

「いや、さすがに使われてないはずの旧校舎で、暖房がつけられたら不味いだろう」


正論!


「そんなに難しいか? 水をかけるだけだろ」

「うぅっ。そうだよね。がんばる」


せっかくのエリックの厚意だ。

ここは無駄にしてはいけない。


しっかりと結い上げた髪をほどいて、ビクター様に貰った宝石の髪飾りをポケットから取り出す。

軽く手櫛で髪を整えて、舞踏会っぽい髪形にして、髪飾りで留めた。


ちょっと急いだので直ぐに崩れてしまいそうだけど、練習の間だけだし、まぁいいかな。


私は、エリックから水の入ったワイングラスを受け取った。


「いきます!」

「あぁ」


目を閉じて、深呼吸。


「……」


私は、悪役令嬢ソフィア。

大好きなビクター様を盗ろうとする庶民に、身の程を教えてあげましょう!


「ティファニー・アンブローズ。そのドレスよくお似合いだこと。でも、何かが足りないわ」


私はゆっくりと笑みを浮かべた。

そして笑ったまま、持っていたワイングラスの中身を目の前の人物にかける。

着ていた服が濡れて…、うぅっ…。だめ、まだ終わってない!


「これで完璧」


見た人全員が褒め称える、美しい笑みを浮かべる。

そして、フェードアウト。

華麗に去るつもりだった。


「はぅっ!」


なにもないところでつまずいた!


「! っおい! 平気か?」

「平気!」


ティファニーちゃん役でじっとしていてくれたエリックが、慌てたようにやってきた。


「ありがとう! 練習に付き合ってくれて!」


床にへたりこんでいる場合じゃない。顔を上げ、エリックにお礼を、あぁ!


「エリック! 早く着替えて!」


当たり前だけど、作業着の胸元がびっしょりと濡れている。


「いや、これくらい別に…」

「駄目だよ! 着替えはどこ? 用務員室? もし、偉い人に怒られるんだったら、私のわがままに付き合わされたって言っていいから!」


ソフィアの名は学校内に轟いている。

大抵のことは、私の名前を出せば収まるはずだ。


「そんなことよりも、立てるか?」

「だ、大丈夫」


と、言いたいところだけど、立てない。


「足を挫いたか?」

「違うよ!」


言いつつも立ち上がらないのは、不自然。エリックがさらに近付こうとしたので、威嚇した。


「エリックが着替えて来たら、教えてあげる!」

「おい…」


呆れ顔だけど、駄目! その濡れた姿を見ているほうが今の私には、ダメージが大きい!


「…分かったよ」


小さくため息をつくと、エリックはなにかを呟いた。


「えっ?」


ふわりと風が起こり、エリックの作業着がみるみるうちに乾いていく。


「これでいいか?」

「まほう…?」


あっという間に、ワイングラス一杯分の水を吸った作業着は乾いた。


「エリックも、貴族だったの?」

「いや、違うよ」


でも、魔法を使えるのは貴族しか…。


「ティファニー・アンブローズだって、貴族じゃないだろう?」

「でも、」


ティファニーちゃんが、この学校ではじめての庶民出の生徒。

エリックの年齢はわからないけど、私よりも大人。


「魔法の使い方がすごく上手。私あんな風に乾かせないよ」


学校に入ってなくても、そんなに魔法って使えるもの?


「そりゃあな。何年もここの用務員をしてれば、見よう見まねで使えるようにもなるだろう」

「…エリック、天才?」

「おほめに預かり光栄です。で、側に行っていいか?」

「…うん」


ゆっくりとエリックは私の前に来た。

何だか真剣な顔だ。


「立てない理由は?」

「うっ。これ…」


私は背後を指差した。

自分ではよく見えないながらも、感覚でわかる。


「…絡まったのか」

「うん」


頷くと、絡まった髪が引っ張られて痛い。

躓いて床に手を付いた拍子に、家庭科室の棚のどこかの釘に髪が絡まってしまったらしい。ほどこうにも背中なので、自分では見にくい位置にあった。


「でも、大丈夫。ゆっくり手探りでやれば解けるから」


さっきまでは、エリックの作業着が気になってそれどころじゃなかったから、やらなかっただけ。

エリックの無事が確認できた今なら、心置きなく出来る。


「そんなに複雑には絡まってないんだけど、舞踏会前に髪を傷めそうなことは出来ないから、慎重にやらないと」


ソフィアの武器は、美貌と手の行き届いた肌と銀色の髪。


この時期に、髪の長さは変えられない。


「俺がやる」

「えっ?」




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