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悪役令嬢ですが、シナリオを順守することに決めました  作者: 飴屋


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39/72

38,秋薔薇の君7 ソフィアと兄

「みんなティファニーちゃんの気を引くのを頑張ってる頃かなぁ」


私は悪役令嬢らしく、学校をさぼって公爵家に帰ってきていた。

ゲーム内で公爵の家が出てきたことはない。ここなら、うっかりネタバレとかしない安全地帯だ。秋薔薇の君編は、ソフィアの出番はなかったので、私はここに逃げ込むことにした。


「秋薔薇の君編…」


リンジーちゃんの恋物語。

なんだけど!

この女子生徒に流行ったおまじない、恋人や親族経由でほとんどの男子も知っているのだ。

だから、この時期に女の子からの「一緒に紅茶を飲みませんか?」というお誘いは、ほとんど告白したも同然。

ティファニーちゃんが朝露を探していると知って、攻略対象者たちは、ティファニーちゃんの想い人は誰かとそわそわする。

親友リンジーちゃんのために探しているだけだと知らず、朝露を探すティファニーちゃんの邪魔をして怒られたり、手伝うふりして相手を聞き出そうとしたり、はては、先に紅茶を飲もうと誘ってみたり。


攻略対象者たちによるティファニーちゃん攻略大作戦、が裏テーマだった。


「ふふっ。ちょっと見たかったなぁ」


いつもはクールなハーリィも、実験にしか興味がないクレイグも、他のメンバーも。みんなティファニーちゃんに振り回されて、楽しそうに笑っていた。


悪役は出てこない、平和なこのイベントが一番好きだったかもしれない。


「何を見たかったのかい?」


庭で薔薇の花を見ていると、なぜかお兄様がいた。


「お兄様…?」


服装からして、お城に行ってきたのは間違いない。でも、まだ昼間なのに…?


「かわいい妹が帰ってきていると聞いて、休みをとったんだよ」

「まぁ…」


思わず素が出そうになって、踏みとどまる。


「わたくし、ドレスを注文しようと思ってましたの。お兄様がいてくだされば、心強いですわ」


新しいドレスの注文。

それは、悪役令嬢ソフィアの大好物。

ゲームのイベントに必要なものだから、私も気兼ねなくおねだりできる。高級な布をたくさん使った特注のドレス。靴もアクセサリーも新しいものを。…イベントじゃなければ、こんな大きなお買い物できない…。


「ドレス。冬の舞踏会用かな?」


流石、察しのいいお兄様だ。

私は、うなずいた。


「えぇ」


冬の舞踏会。

それは、魔法学校で催されるイベント。

冬の長期休暇の前に行われるもので、全員参加が義務付けられている。

普通こういったものは、「パートナーがいなければ参加出来ない」というのがほとんどなんだけど、攻略対象者とティファニーちゃんのためのルールなのか、まさかの全員参加。

一応、この世界の建前としては、「生徒が早くに舞踏会に慣れるため」らしい。


婚約者がいる場合はもちろん婚約者がエスコートする。


「その顔はもうどんなドレスにするか、決まっているようだな」


もちろんです!


心のなかで叫んでから、私は令嬢の笑みを浮かべた。


「ビクター様の瞳のような、深紅のドレスにしようと思ってますわ」


ゲームで何度も見た!

特に、冬の舞踏会編は、一番大事なフラグが立つイベントだった。だから、ソフィアのドレスもデザイン画が描けるほど見た。


「うん。それがいい。もちろん今日は俺が一緒にいてあげる。けど、」

「けど?」


多分、私が口を出さなくても、このドレスのデザインは変わらない。だから、まさかお兄様が何か言ってくるとは思ってなかった。


「けど、お前の婚約者にも先に教えておくほうがいいんじゃないか?」

「…」


パートナーがいる場合、少し同じ色をつかった物を取り入れてお揃い感を出すこともある。

ビクター様とお揃い。

なかなかの強烈な一言だ。


あれ、ゲームではどうだったっけ?

ティファニーちゃんの白い清楚なドレスは思い出せるけど、ビクター様の正装姿は思い出せない…。


「お兄様…」

「なにかな?」

「素晴らしい考えですわ!」


私は悪役令嬢ソフィアらしく答えた。

うん。

生徒会長ビクター様はこの時期忙しくて会えないだろうし、どうせお兄様はビクター様の正装姿を見ることはない。

ここは、適当に話を合わせておこう!

悪役兄妹っぽく、他人の予定など考えないまま暴走してみる。


「わたくし、明日にでもビクター様に会いに行ってお話してみますわ。ビクター様とお揃いのものがほしいと!」


明日は休日。

でも、ビクター様は生徒会の仕事か公務があるだろう。だから、事前のお約束なしに行っても門前払いに決まってる。

あえて寝坊して遅い時間に行って、すれ違いを狙うのもありかなぁ。


ゲームのイベント以外で会わないようにと動く癖がついている。

折角提案してくれたお兄様には悪いけど、…そんな私にお兄様は優しい目を向けた。


「大丈夫だ。ソフィア」

「?」

「もうお前の婚約者には、話を通しておいたから!」


お兄様…?



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