表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢ですが、シナリオを順守することに決めました  作者: 飴屋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/73

35,秋薔薇の君4 クレイグ・ワグナー

◈◈◈◈◈


「ティファニー。向こうのソファで休んでいいよ?」


理科部の部屋で実験器具の片付けを手伝っていると、クレイグが言った。


「ごめんなさい! もっと丁寧に扱いますね!」


前にティファニーが通っていた学校では、見たこともないような実験器具ばかり。一応、洗い方は教わったつもりのティファニーだったが、どうやら間違えていたようだと、謝った。

その様子を見て、クレイグは不思議そうに首をかしげた。柔らかな金髪が揺れる。


「どうしてそう思ったの? 違うよ。ティファニーは誰よりも丁寧に洗ってくれてる」


流しに立つティファニーの横に、クレイグがやって来た。ティファニーが洗ったばかりの道具を指差した。


「ほら、この折れ曲がったところもきれい。いつもありがとう」


クレイグにすぐ隣で微笑みながら褒められて、ティファニーは照れた。

クレイグの言葉はいつもまっすぐで、心に染み込むのだ。


「ふふっ。クレイグ先輩に褒められるの、とても嬉しいです。…でも、何でソファなんですか?」


そんなに疲れて見えるのだろうかと、ティファニーが聞くとクレイグは少し考え込んだ。


「だって、今朝もピヨ子たちのご飯、ティファニーがあげてくれたんでしょ」


ティファニーは理科部の部員ではないが、クレイグと仲が良くなって以来、部室に良く出入りしている。

生徒会室と図書室、理科部の部室は、ティファニーのことを良く思っていない貴族からの避難場所でもある。

普段、避難させてもらっているお礼もかねて色々手伝っていたら、部員とも仲が良くなって、時折頼みごともされることもあった。


本来、飼育小屋のエサやりの当番は二年生。しかし、どうしても課題が終わりそうにないから、と頼まれたのだ。


「はい。私が今朝はエサやりをしました。でもいつも起きて、友人と自習をしている時間ですし」


説明している途中で、今日は違ったと思い出した。


「あ、でも、今朝は庭園に行ったんです! 友人と一緒に!」

「庭園…?」

「はい。庭園に行く途中だったんで、何も大変なことはなかったですよ」


なんの負担もかかっていないと説明したつもりのティファニーだったが、クレイグは何かを考え始めた。


「最近よく聞くね。庭園」

「はい。秋薔薇が咲いたからだと思います」


クレイグには女子生徒に流行っているおまじないの話よりも、植物の方がいいだろうと、ティファニーは判断した。


「そっか。ティファニーも見に行ったんだ?」

「はい! 花びらがたくさんある薄紅色の花が可愛かったです!」

「ふぅん。ねぇ、喉が乾かない?」

「? そうですね。少し」

「僕が淹れてあげる」

「ありがとうございます」


クレイグは作業の休憩にコーヒーを淹れてくれる。今日もコーヒーだろうと思ったティファニーだったが、クレイグはいつもと違う缶を棚から出した。


「これ。この前、王都に住んでる姉さまに貰ったんだ。薔薇の香りがつけてある紅茶なんだって」


ティファニーが話したような薔薇の絵が描かれている金色の缶は、今まで見たことも聞いたこともないメーカーのものだった。


「クレイグ先輩、それはとても高価なものでは…?」

「うん。だから、一緒に飲もう?」


おっとりとした微笑みに、ティファニーは遠慮することを忘れた。


「あ、温室に行こうか」

「温室、ですか?」

「そう。そこなら、誰もいないから静かにお茶が飲める。薔薇も確か植わってたはず」


急にテキパキと動き出したクレイグは、小さな籐製のカゴにお茶の道具をいれ始めた。


「クレイグ先輩、あの。片付けは…」

「もうほとんど終わってるから大丈夫。それより、ティファニーは紅茶にミルクは入れる?」

「あ、いえ、たまに入れますけど…」


高級そうな茶葉にミルクを入れて飲む勇気はない。


「…先に入れる派? それとも後派?」


いつものゆっくりとした口調だ。質問も、紅茶の飲み方について。いつもの会話とさして変わらないはずだ。それなのに、なぜか目が笑っていないような気がした。


◈◈◈◈◈

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ