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悪役令嬢ですが、シナリオを順守することに決めました  作者: 飴屋


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34,秋薔薇の君3 ハーリィ・フュルト

◈◈◈◈◈


「…あー。ティファニー、ちょっといいか?」


授業も終わり寮への帰り道、ティファニーはハーリィに呼び止められた。


「どうしたの?」


期末試験もまだ先のこと。

授業で何か分からないことでもあったのかなと、ティファニーが呼ばれるままに近付くと、ハーリィはなぜか困ったような顔で空を仰いだ。


「その、な…」

「ハーリィ?」


ハーリィは背が高い。ティファニーの頭ひとつ分以上あるので、上を見られると、全く表情が分からなくなってしまう。


着崩した制服から、外国の物のような首飾りが見えた。腕にもいくつか装飾品をつけているが、全てが調和がとれていてハーリィに似合っている。


「ハーリィはおしゃれだね」

「んあ? こんなんで良ければいくらでも、…じゃなくて」


やっとこっちを向いてくれた。


大丈夫。

ティファニー先生に話してみなさい!


そんな心持ちで微笑むと、ハーリィは大きくため息をついた。


「…その、朝に庭園に行ったって聞いたけど」

「庭園に? うん。行ったよ」


まだ勉強の話はしたくないらしい。

ティファニーは、ハーリィの雑談に付き合うことにした。


「もう三日目かな? 朝の薔薇は香りが濃くて、とっても素敵な気持ちになれるよ」


本当の目的は、親友リンジーの恋のおまじないの材料探しだ。秋薔薇についた朝露をシロップ代わりに紅茶に入れると、飲んだ二人は幸せになれるというものらしい。


でもそれは、リンジーの秘密の恋。

ティファニーが勝手に、他の誰かに話すわけにはいかないのだ。


「三日も…」


なぜか、ハーリィは絶望した顔になった。


「う、うん。明日も行くつもりだけど…」


この三日間、薔薇に朝露がおりていなかった。リンジーの落胆はすさまじく、しまいには、


「秋薔薇様。私の恋は諦めろということですか…」


と、薔薇に話しかけるまでになってしまったので、頑張ってティファニーがはげましたのだ。


明日は、リンジーのお部屋まで迎えにいこう。


早朝ならば、あの方もいないので、寮内を歩いても見つからないはず。

念のため、迂回ルートや隠れる場所も調査済みだった。


「明日も…」

「うん!」


意気込んでティファニーが答えると、ハーリィは何かを決意したように頷いた。


「ティファニーは、紅茶、好きか?」

「紅茶? …普通かな」

「普通かよ…」


一瞬でがっかりされてしまった。

慌ててティファニーは言い分けをする。


「だって! ここの生徒の皆さんの紅茶に対する思いが強すぎて!! 私は色がついていれば、それだけでおいしく感じちゃうから…」


茶葉、お湯の温度に秒単位の時間調整、食器の扱い方。

まさかお茶を入れるという授業があるとは、思わなかった。


「色がついてればって、またおおざっぱだな」


ハーリィがおかしそうに笑った。やっと笑顔を見せてくれ安心したティファニーだったが、内容に怒った。


「あのね、庶民は何度も茶葉を使うんだよ!」

「それと舌の良し悪しは違うだろ」

「…そう、かも。淹れるのも下手だし…」

「あー。まぁ、いいや。紅茶が飲めればそれで」

「…」


ハーリィは腕を組んで言った。


「ちょうど船が帰ってきて、外国産の珍しい茶葉が手に入ったんだ。少し分けて…いや、俺が淹れてやる」


ハーリィは商人の息子だ。

世界中をみてきたハーリィが珍しいというのだから、本当に珍しいものなのだろう。


「おおざっぱな舌の私にいいの?」

「…根に持ったのか」

「冗談だよ。ありがとう」


友人が自分のために紅茶を淹れてくれる。それだけでも、幸せなことだ。

だから、自分も出来ることでお返ししよう。


「それで、今日の授業のどこが分からなかったの?」

「は?」


◈◈◈◈◈

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