33,秋薔薇の君2
「秋薔薇のおまじない…」
学校内のそわそわした雰囲気に思わず私は呟いた。
その名の通り、秋薔薇が咲く時期に始まるこのイベントは、ティファニーちゃんの親友が主人公のちょっと異色な回だ。
リンジー・コストナー。
桜色のふわふわな髪に、すみれ色の瞳。儚げな妖精のような可愛らしさを持つ彼女は、男爵の娘。入学式に、ティファニーちゃんに助けてもらって以来二人は仲良しになったけど、悪役令嬢のせいで表立っては仲良く出来ない。
公爵家に睨まれるわけにはいかないから、二人の友情は交換ノートや早朝の一時間で育まれる。
そんなリンジーには、片思いの相手がいる。
マックスの弟、モーリス・コリンズだ。
通常であれば、モーリスもまた攻略対象者なので、リンジーちゃんはティファニーの邪魔をする立場と言うことになる。悪役令嬢とおなじだ。
でも、モーリスルートを狙わない限りは、リンジーちゃんは敵ではない。むしろ二人の仲を応援したほうが、後々、強力な味方になってくれるのだ。
因みに、モーリスを攻略することを選んで成功した場合は、リンジーちゃんと泥沼の喧嘩に…なるとことはなく、リンジーちゃんに涙ながらに祝福されていた。
今のところティファニーちゃんは王子ルートにいるので、リンジーちゃんのライバルにはならない。
両親に婚約者を決められてしまう前に告白しなくちゃ、と焦るリンジーは、おまじないのことを聞いて最後のかけに出る。
私と一緒に紅茶を飲みませんか。
その一言を言うために、リンジーは頑張って秋薔薇の植えられた庭園に毎朝通う。
ティファニーちゃんも親友の恋を応援するために、一緒に探してあげる。
「うーん。確か、こんな感じだったはず…」
朗読会でのミスを受けて、より慎重になろうと、私はゲームの内容を思い出せる限り事細かに書き出した。
…誰かにこのメモを見られると怖いから、本当はあまり文字に起こしたくはなかったんどけど、まぁ、イベントが終わったあとに捨てればいいかな。
「このイベントでのソフィアの出番はゼロ」
なにせ、これは恋のおまじないにまつわること。
婚約者がいて、卒業と共に結婚が決まっている(と思っている)ソフィアには、関係のない話。
婚約者の決まっていない方は、大変ねぇ。
そんな感じで、高みの見物な感じなのだ。
「だから、早朝に出掛けない。庭園には行かない。…念のため、ビクター様にも近付かないでおこう」
そうすれば、前回みたいな失敗はしないはずだ。
「秋薔薇の咲く期間は十日間くらいだったはず」
その期間は絶対におとなしくしていよう!
私は心に決めた。
モーリス;どちらかと言うと理系。現実主義者。
[公式ファンブックより]




