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悪役令嬢ですが、シナリオを順守することに決めました  作者: 飴屋


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33/73

32,秋薔薇の君

魔法学校の学生寮は、二十一時から翌五時までは鍵がかけられる。

だから、校舎内の大掛かりな清掃は早朝に行うことが多い。


「っよし」


エリックは歯車の点検を終えると、いつものように校舎に向かった。




「おはよう!」


校舎の清掃を終え、落ち葉を片付けているときだった。

元気な声がして振り替えると、そこには、ソフィア曰くこの世界の命運を握る主人公、ティファニー・アンブローズがいた。友人と待ち合わせていたのか、桜色の髪の女子生徒と仲良く話ながら道の奥へと消えていった。


そういえば、ソフィアが言っていたな。


『ソフィアは低血圧で、朝は遅いの。反対にティファニーちゃんは早起き。だから、早朝の学校はティファニーちゃんにとって安全地帯なんだ!』


なるほど、確かに早朝にティファニー・アンブローズを見かけることが多い。

理科部のニワトリ小屋がある方から来たから、もう、一仕事終えてきたのだろう。


「おはようございます」


今度の声はエリックに向けてのようだ。

声のしたほうを見ると、そこには女子生徒がいた。


「おはようございます」


少し眠そうな顔の女子生徒は、エリックに訊いた。


「もう向こうの庭園は、開いてますか?」

「えぇ。秋ばらが咲いたと、庭師が張り切ってますよ」


女子生徒は安心したように頷いた。


「そうですか。ありがとうございます。作業中のところ、お邪魔をしました」

「いえ、お気になさらず」


丁寧にお辞儀をして、女子生徒は足早に庭園へと向かった。


「新しいイベントか…」


文化祭が終わり、しばらくは落ち着いた日々が続くのかと思いきや、すぐに次のイベントが始まるとソフィアは告げた。


その名も「秋薔薇の君編」。


『女子生徒の間でね、おまじないが流行るの。秋薔薇についた朝露を入れて紅茶を飲むと、一緒に飲んだ人と両想いになれるって』


果たしてソフィアの言った通りそのまじないは、あっという間に流行した。

しかし、秋薔薇は咲いたが、紅茶に入れられるほどは朝露がついていないのが現状だった。

そのため、早朝に庭園へと向かう女子生徒は日に日に増えていく。


「うーん」


ティファニー・アンブローズもまた、庭園へと向かっていた。


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