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悪役令嬢ですが、シナリオを順守することに決めました  作者: 飴屋


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23/26

22,緊急対策本部

「当日欠席…」

「ソフィアがいなかったところで、ティファニー・アンブローズがその詩を朗読するわけじゃないだろう」


エリックが言った。

…全くその通りだ。


「うぅー。じゃあ、ビクター様とクレアの記憶を消す方法を探す…?」


ここはいつもの旧校舎にして、臨時緊急対策本部。

議題は、私がやらかしたイベント改悪をどう軌道修正するか、だ。


「記憶を…、物理的にか?」

「魔法で!」


エリックの呆れたような視線が痛い。


「…魔法でそんなことは出来ないって分かってるよ…」


魔法で、記憶の操作なんて出来ない。


「私が気が変わったって言って、他の詩にしても、もうティファニーちゃんにあの詩を伝える術は断たれちゃった」


ビクター様が伝えなければ意味がないのだ。


「それに、もし今の状況でティファニーちゃんがあの詩を朗読したら、今度はクレアが怒る気がする…」


八方塞がりだ。

あぁ、なんであの時うっかり歌ってしまったんだろう…!

私はテーブルに突っ伏した。


「…別に、そこまでその詩にこだわる必要はないんじゃないか?」


俺は詩の教養なんて全くないけど。

エリックが不思議そうに言った。


「要は、王子とアンブローズが仲良くなればいいんだろ。その邪魔をしたわけじゃない。詩なんて他にもあるんだから、その二人に任せればいいと思うが?」


…。


「…その詩は、ティファニーちゃんが読むために作られた詩なの。だから…」


わがまま公爵令嬢では、説得力がない。


「私が聴きたかったの…。あの透き通る綺麗な声で、朗々と読み上げる! 私が大好きなシーン! それに、色々あって…。あの詩を朗読することで他のクラスメイトのティファニーちゃんを見る目が変わって、少しずつ仲良くなって、ティファニーちゃんも自信がついてくるっていう大事な分岐点だった!」


それを、まさか自分でぶち壊すとは…。


「あぁー。私のばか…」

「そこまでのことかな?」

「そこまでのこと!」


悪役令嬢は関与しないからって、油断してはいけなかったのに…。


「…まぁ、でも、もう変えられないんだから。他を頑張ればいいだろう」

「…他?」

「王子とアンブローズの仲を取り持つとか、その詩よりもいい詩を探して、アンブローズにそれとなく伝えるとか…?」


あの詩よりもティファニーちゃんに相応しい詩…。


「ないよ…」


だから、こうやって悩んでいるのだ。

特別、素晴らしく良い詩と言う訳じゃない。

ちょっとありがちな短い詩。

でも、あの場ではティファニーちゃんが読むべき詩なのだ。


「こうなったら、詩の朗読会自体をやめにして、合唱するとか、劇をやるとか…」

「落ち着け。もう文化祭まで日はないぞ」

「そうだよね…」


テーブルの上には、一枚の美しいカードがある。

朗読会のため、学級委員長が手配したものだ。

私のこのカードには、ティファニーちゃんが読むはずだった詩が印字されている。


「どうにかして、このカードをティファニーちゃんに渡さなくちゃ…」


ビクター様経由は諦めるにしても、せめてティファニーちゃんにこの詩を朗読してもらわなければならない。

なにがなんでも。


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