110,外
「…」
エリックが外に出た。
ティファニーちゃんはその様子を確認すると嬉しそうに一度跳び跳ねて、上の階にいる私に微笑みかけた。
「…それで、」
エリックがなにかを言いかけたとき、焦ったような大きな足音が聞こえた。
「ティファニー! 大丈夫かっ?」
走ってきたのは、ハーリィとクレア。
なぜこの二人が?
疑問に思っていると、息を切らせながら、二人は言った。
「生徒会長の指示通り、用務員を調べてたら、大きな鐘が鳴って。そうしたら、こつぜんとその用務員が消えたんだ! 時計塔管理人だとか言う男!」
「…ハーリィ」
「そうしたら時計が止まっている上に、何か崩れたような大きな音がして。何でティファニーがここにいるんだ? 一体なにがあった?」
「えっと…」
ティファニーちゃんが返答に困っていると、ハーリィはティファニーちゃんのとなりに立つ人物を見た。
「…? 業者の人間か?」
「っそう! 時計塔管理人のエリックさん! 時計塔の異変にいち早く駆けつけたの!」
「は?」
……。
ティファニーちゃんが断言した。
困ってビクター様を見ると、ビクター様は一つうなずくと、私の手を取った。
「取りあえず、俺たちも行こう」
「ビクター様…」
何も言えないでいる私を軽く引っ張り、外へ。
「…ビクター様。えっ、ソフィア様も!」
時計塔から出てきた私たちに、クレアが気付いた。
「私たち、偶然時計塔の近くにいて。エリックさんのお手伝いをしてて…」
ティファニーちゃんがビクター様を見た。
「…あぁ。そうだ」
「!」
ビクター様の肯定した。
信じられないものを見たように、エリックがビクター様を見た。
「彼は時計搭管理人で、今は修復の途中だった。…そうだな?」
念を押すようにエリックに聞く。
エリックは困ったようにビクター様からティファニーちゃんに視線を移し、最後に私を見た。
「…あぁ」
観念したように、エリックが頷いた。
「それにしては、突然消えたかに見えたけど…」
「エリックさん、すごく慌ててたから!」
納得していないハーリィに、ティファニーちゃんはゴリ押しした。
「ソフィア様も、お手伝いをされていたんですか?」
クレアがハンカチを私に差し出した。
…涙の跡が残っていたかな。
「えぇ。…ありがとう」
「彼女は、俺たちが怪我をしたから驚いたようだ」
涙を拭いていると、ビクター様が言った。
「彼も怪我をしている。…医務室に」
エリックの手には、火傷の傷。
ビクター様が負わせたものだ。
ビクター様の頬にも、小さな擦り傷が出来ていた。
…ティファニーちゃんが覚醒しなかったから、治らなかった傷。
「いや、俺は…」
「手当てをした方がいい」
そう言うと、ティファニーちゃんが頷いた。
「ビクター様もです。頬に怪我を」
「これはかすり傷だから、治療は必要ない」
「駄目です」
ピシャリと言うと、ティファニーちゃんは二人を見た。
「お二人で保健室に行って、治療してもらってきて下さい。エリックさん」
ティファニーちゃんは、ずっと大事に抱えていた魔法石をエリックに見えるように持ち上げた。
「この魔法石。もう一度、時計塔にはめていいですか?」
青い石が太陽の光を浴びて、きらりと光った。
「…あぁ。そうだな」
「良かった。この時計塔が無いと一日が始まりませんから」
そう言って、微笑んだ。




