101,魔王様の正体
魔王と呼ばれた。
つまりは、
「この方は、魔物ではなく、人、なのですか…?」
美しいけれど、見た目は完全に人で。
この世界に魔王様以外、魔物はいない。
「今までのことを踏まえると、そうなるな」
「えっ、だって…」
頭が混乱してる。
魔王様は、ゲームの最後に出てくる敵。
魔王様の封印された理由なんて、深く考えたことはなかった。
ここは、私たちの現実なのに。
魔王様が存在するって知ってたのに。
『国を滅ぼして、魔王は何がしたかったんだ?』
そんな話もしてたのに。
「恐らくは、当時の王が魔力を奪うことを正当化するためにそう呼んだだけだ」
「…そんな…」
「そう嘘をつかなければならなかったのなら、神話にある『暴力的な魔王』も存在しない。…お前が本当に危険人物ならば、ただ捕らえればすむ話だった。魔王だから、封じなければならない、と」
…つまり、善良な一般市民だったってこと?
「…なんてひどい」
「俺は、この神話は作り話だと思っていた。だから、不正を働いた者を比喩的に表現したか何かだと思っていたんだ。…だが、実際に封印されていて、なおかつこんなにも悪意がないとなると、そう考えるのが妥当なのだろう」
魔王様…、この人は大きくため息をついた。
「…まぁ、普通はこんな目に合うなんて思わないだろうな。…唯一、忠告してくれた友人がいたが、真剣に聞かずに笑い飛ばしたら…このざまだ」
その言葉に、なにかが引っ掛かった。
似たようなことをどこかで聞いたことがあったような…。
「…パトリシアとロバートは、俺を捕らえろと王に命じられて、反発して俺を逃がした」
「では、魔力だけを奪ったのは、王に渡さないためか?」
「そんなとこだろう。時間がないなか考えた苦肉の策だったらしいが、…もう少し説明が欲しかったな」
魔王と呼ばれた男性は、頭を振った。
「眠りについて目が覚めると、当時の記憶が朧気になってる」
「今はもう、戻ったのか?」
「あぁ。…記憶が元通りになるまでは時間がかかるんだ。さっきも、王の兵がやって来た、戦いの中のつもりだった。…今度眠らされたら、どうなるかはわからないぞ。記憶が混同して、本当に国を滅亡させるかもな」
「では、どうしろと?」
「さぁ。その方法は、あの子が知ってるんじゃないのか?」
視線が私に集まった。
「私…私が知っているのは、魔王様を眠らせる方法か、魔王様を倒す方法で、それ以外は知りません…」
声が震える。
だって、こんな裏話、ゲームに無かった。
ずっと、ゲームと同じことが起こっていた。
けど、その裏側があって、その幅は広い。
そう思っていたけど、こんなのない。
「ソフィア」
だって、あんまりだ。
この人は、何も悪くはないのに。
「次に目覚めたら、絶望のあまり国を破壊する本当の魔王になるぞ?」
「!」
そんなことを言う彼の目は優しくて、ビクター様が言っていたことがやっと分かった。
この人は、神話の中の魔王様じゃなくて。
ここに封印されているのに、誰も疑問に思わなくて。
管理人の名前が、エリックで。
そのエリックは、なぜか百年前のこともよく知っていて。
甘いものが好きなのに、街のお店には詳しくなくて。
「出来ないよぉ。…エリック」
魔王様でも、被害者の人でもない、目の前にいるエリックが目を丸くした。




