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悪役令嬢ですが、シナリオを順守することに決めました  作者: 飴屋


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102/108

101,魔王様の正体

魔王と呼ばれた。


つまりは、


「この方は、魔物ではなく、人、なのですか…?」


美しいけれど、見た目は完全に人で。


この世界に魔王様以外、魔物はいない。


「今までのことを踏まえると、そうなるな」

「えっ、だって…」


頭が混乱してる。

魔王様は、ゲームの最後に出てくる敵。


魔王様の封印された理由なんて、深く考えたことはなかった。


ここは、私たちの現実なのに。

魔王様が存在するって知ってたのに。

『国を滅ぼして、魔王は何がしたかったんだ?』

そんな話もしてたのに。


「恐らくは、当時の王が魔力を奪うことを正当化するためにそう呼んだだけだ」

「…そんな…」

「そう嘘をつかなければならなかったのなら、神話にある『暴力的な魔王』も存在しない。…お前が本当に危険人物ならば、ただ捕らえればすむ話だった。魔王だから、封じなければならない、と」


…つまり、善良な一般市民だったってこと?


「…なんてひどい」

「俺は、この神話は作り話だと思っていた。だから、不正を働いた者を比喩的に表現したか何かだと思っていたんだ。…だが、実際に封印されていて、なおかつこんなにも悪意がないとなると、そう考えるのが妥当なのだろう」


魔王様…、この人は大きくため息をついた。


「…まぁ、普通はこんな目に合うなんて思わないだろうな。…唯一、忠告してくれた友人がいたが、真剣に聞かずに笑い飛ばしたら…このざまだ」


その言葉に、なにかが引っ掛かった。

似たようなことをどこかで聞いたことがあったような…。


「…パトリシアとロバートは、俺を捕らえろと王に命じられて、反発して俺を逃がした」

「では、魔力だけを奪ったのは、王に渡さないためか?」

「そんなとこだろう。時間がないなか考えた苦肉の策だったらしいが、…もう少し説明が欲しかったな」


魔王と呼ばれた男性は、頭を振った。


「眠りについて目が覚めると、当時の記憶が朧気になってる」

「今はもう、戻ったのか?」

「あぁ。…記憶が元通りになるまでは時間がかかるんだ。さっきも、王の兵がやって来た、戦いの中のつもりだった。…今度眠らされたら、どうなるかはわからないぞ。記憶が混同して、本当に国を滅亡させるかもな」

「では、どうしろと?」

「さぁ。その方法は、あの子が知ってるんじゃないのか?」


視線が私に集まった。


「私…私が知っているのは、魔王様を眠らせる方法か、魔王様を倒す方法で、それ以外は知りません…」


声が震える。

だって、こんな裏話、ゲームに無かった。

ずっと、ゲームと同じことが起こっていた。

けど、その裏側があって、その幅は広い。

そう思っていたけど、こんなのない。


「ソフィア」


だって、あんまりだ。

この人は、何も悪くはないのに。


「次に目覚めたら、絶望のあまり国を破壊する本当の魔王になるぞ?」

「!」


そんなことを言う彼の目は優しくて、ビクター様が言っていたことがやっと分かった。


この人は、神話の中の魔王様じゃなくて。

ここに封印されているのに、誰も疑問に思わなくて。

管理人の名前が、エリックで。

そのエリックは、なぜか百年前のこともよく知っていて。


甘いものが好きなのに、街のお店には詳しくなくて。


「出来ないよぉ。…エリック」


魔王様でも、被害者の人でもない、目の前にいるエリックが目を丸くした。



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