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悪役令嬢ですが、シナリオを順守することに決めました  作者: 飴屋


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101/108

100,王家の家訓

「剣もダンスも一度交えれば人柄がわかる」


ビクター様が、剣を構える魔王様に向かって言った。


「昔から、王族が親から子に繋いできた言葉だそうだ。だから、手を抜くことなく、精進せよと」


それは初めて聞いた。

ビクター様は、こんな雪の降る寒い日でも鍛練を欠かさない。その言葉を守っていると言えるだろうけど…。

なぜ、今その話なんだろう?


「お前は、それなりの剣の使い手だろう。しかし、剣を打ち合っていても一度も敵意を感じない」

「…おい」

「そこで怒るくらいなら、俺たちが『くだらないおしゃべり』をしているときに、攻撃してくればよかったんだ。隙はたくさんあっただろう?」

「ビ、ビクター様?」


確かに、魔王様のことよりも、話に夢中になってたけど!

まさか、わざとだったの?


驚く私にビクター様が頷いた。


「君が言っていた通り、敵意が無ければ、何もしてこないようだ」

「…」


わかってくれて嬉しいけど!

なんだか、ビクター様の方が悪役のように笑った。

…悪役令嬢の婚約者が悪役…?


「お前は、パトリシア妃とロバート王が封じた者なのだろう」


魔王様は、いつの間にか頭を押さえていなかった。もう、記憶が戻ったのだ。

だからか、ビクター様の言葉に苦く頷いた。


「だが、本当に魔王か?」


ビクター様が聞いた。

それは、前にも言っていたこと。


「ビクター様、どう言うことですか?」


魔王様が魔王様じゃなければ、本物はどこに?


「…魔王とは魔物たちの王。しかし、魔物はいない。魔王の臣下や仲間の話も聞いたことがない。では、誰がお前を魔王と呼んだ?」


魔王様は顔をそらしたまま、何も答えなかった。


「あの、魔王様が暴れた時に被害にあった人とかでしょうか?」

「それなら、魔王ではなく、魔物の方が先にくると思う。もしくは、怪物か」


それで、なんとなくビクター様が言いたいことが分かった気がした。


「つまり魔物が複数いて、そのなかでひときわ強かったから王と呼ばれるようになった…?」


それだと、魔物がまだどこかに封印されているのかも!


慌てる私にビクター様は言った。


「いや、さっき言ったように、他の魔物の記述はどこにもないんだ」

「…?」


わからない。

なら、この魔王様は誰?


「魔王を討伐せよ。と当時の王の命を受け、パトリシアとロバートが向かった」


それは、お芝居の序章でも使われている文句。


「一番始めにお前を魔王と呼んだのは、当時の王だな?」


魔王様がため息をついた。


「…俺が自分で名乗ったとは思わないのか?」

「突然現れて、魔王と? それを誰が信じる」


…確かに。

すごく強くて、類いまれなる美貌の持ち主ではあるけれど、この方は、角が生えたり翼が生えたりしていない。

見た目が普通の人型なのだ。


「王と呼んだのは、己が王族だったから。対等な存在であると認めてのことだったのだと俺は考えている。…では、なぜ認めたのか」


ビクター様の顔が険しくなった。


「…お前を魔王として『討伐』する必要があったからだ」


…?


私とティファニーちゃんは顔を見合わせた。

魔王様に悪意が無いと分かってくれたのは嬉しいけれど、話の方向が全くわからない。


「…俺の魔力を、王が欲しがった」


ポツリと、魔王様が言った。


「他国との争いが始まって、強力な武器が必要だったらしい」

「!」


ここは山に囲まれた小さな国。

戦争は昔のこと。

…昔は、戦争をしていた時代があった。


「それで、お前から魔力を奪い取ることを正当化するために…」


ビクター様は言った。


「お前を魔王と呼んだのか?」



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