99,時計塔管理人
「…君に、穀物庫で見つかった行方不明者や、竜の姿の魔王の芝居のことを教えたのは、そのエリックと言う男か?」
「…はい。そうです」
エリック本人がいないところで、エリックの話はあまりしたくない。
ビクター様は、私の返事に少し考えながら言った。
「…失恋がきっかけで成績が落ち、行方不明になった末に穀物庫で見つかった生徒は、百年程前の話」
「え?」
「魔王が竜だったとした芝居は、演劇部の過去百年分の記録を探しても、見つけられなかった」
…。
「君は、数年前の話として聞いたのだったな。…百年前のことを見てきたかのように話した。その男は何者だ?」
頭がぐるぐるする。
エリックは、みんなの味方の用務員さんで、私の大事な人。
いつも優しくて、励ましてくれた。
「エリックは…」
「そろそろ、くだらないおしゃべりは終わりにしてもらおうか」
魔王様が言った。
一度苦しげに咳払いをすると、ゆっくりと立ち上がる。
「…こちらには、魔法石がある。それでも、戦う気か?」
「愚問だな」
魔王様が剣を構えた。
「ビクター様! 魔法石は確かにこちらにありますが、長いときを経て、魔王様の魔力も回復しているんです! ですから!」
多分、完全ではない。
魔法石からも私が早めに奪い取ったので、あまり魔力は得られてないはず。
でも、そもそもが規格外の力を持った魔王なのだ。
あまり煽らないで!
そう言うと、ビクター様は頷いた。
「君の予見では、ここで魔王が勝つとどうなる?」
「…国が滅亡する可能性が高いです」
魔王様が過去の記憶を取り戻したから、滅亡ルートは潰えたはずだった。
でも、これだけ色々あると、もう私にも先が見えない。
私は、最悪の場合のシナリオを告げた。
「そうか。それは困ったことになるな」
真面目な顔だ。
でも、なぜか緊迫感がない気がするのはどうしてだろう。




