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夕暮れの小道
夕陽が、地平線へと沈みかけていた。
空は茜色に染まり、金色の光が木々の間を縫うように差し込んでいる。
鳥の声も少なくなり、辺りはだんだんと静かになってきていた。
その中で、ミコトはふと足を止める。
「ねえ、カナト」
「ん?」
「……この手、いつまで繋いでるの?
もういいんじゃない?」
そう尋ねると、カナトは一瞬きょとんとしたあと――
急に、にやにやと笑い出した。
「お前さ、バカなの?」
「え、なんでバカ?」
「俺がどんだけお前の手握ってたいと思ってるか、わかってねぇの?」
そう言って、カナトはミコトの手をぎゅっと強く握りしめる。
「俺はな、もうこの手、絶対に離さねぇよ。
接着剤あるならくっつけてぇし、
釘打てるなら打ちたいし、
いっそ魔法で縫い合わせたいぐらいだわ」
「それは……やりすぎじゃない?」
「でもそれくらいさ、もう離したくねぇんだよ」
ミコトは、少しだけ目を伏せる。
でも、すぐにそっと笑った。
「……わかったよ」
風が、ふたりの間をすり抜けた。
夕陽の中で、影がひとつに重なる。
その手は、夕暮れの中で、あたたかく繋がり続けていた。