表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/71

あったかいのは、どっちの手

──朝。


鳥のさえずりと、窓から差し込む光。

その眩しさに、ミコトはゆっくりと目を開けた。


 


(……朝?)


 


寝ぼけた頭のまま、ミコトは体を起こそうとして――ふと、気づく。


 


「……え?」


 


自分の手が、誰かの手に包まれている。


しかも、がっつり握られている。


 


視線を向けると、そこには――

穏やかな寝顔の、レイガ王子。


 


「ちょ、ちょっと……!」


 


頬を染めて手を引こうとするが、

レイガは微かに眉を寄せ、寝言のように呟いた。


 


「……冷たかったんだ……おまえの手……」


 


(……え???)


 


その瞬間――


 


「おいおいおいおい!!

何してんだテメェ!!!!!」


 


隣からカナトの怒声が響いた。


 


「手ぇ!? おい手ぇ繋いでたよな!?!?!?」


 


レイガは寝ぼけ顔でまばたき。


「……ああ。ミコトの手が冷たくてな。あっためてただけだ」


 


「いやいやいや!!王子なんだから王宮帰れ!!!

 抜け駆けすんな!!バーカバーカ!!」


 


「はいはい、朝からうるさい。寝起き悪いな、カナト」


 


「うるせぇ!!!」


 


カナトが布団をガバッと跳ねのけた瞬間――


 


「カナト!!!!!!!」


 


部屋の襖が開き、フキさんの怒声が飛んだ。


 


「朝から騒ぐんじゃないよ!!!ご近所さんに響くでしょ!!!」


 


「お、俺じゃねぇよ!レイガが手ぇ――!」


 


「それがどうしたの!

あんたが騒いで台無しにしてるの!反省しな!!」


 


「えぇぇぇぇええええ!?!?」


 


フキさんに耳を引っ張られて廊下に連行されるカナト。


レイガはミコトの横で、のほほんと伸びをした。


 


「……朝だな。いい朝だ」


 


「……そう、ですね……」


 


ミコトは、まだ熱の残る自分の手をそっと見つめた。


(……冷たかったから、なんて。

 そう言われたら、もう……反応できないよ)


 


ほんの少しだけ、心まで、温かくなった気がした。


 


──朝の静寂は、今日も誰かの心を、ゆっくりと溶かしていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ