王との決戦、誓約の書の崩壊
王の鋭い眼光が俺たちを射抜くように見据えた。
「この国を支えてきた誓約の書、それを壊そうとする者は反逆者だ。」
その声には確かな威厳があった。しかし、俺たちはもう引き下がるつもりはない。
「偽りの愛に支配された王国を終わらせる。ここで決着をつける!」
俺は剣を構え、セリスも魔力を高める。ルークとアゼルも戦闘態勢に入った。
「行くぞ!」
王が大地を踏み鳴らすと、床から魔法陣が浮かび上がった。雷のような光が走り、王の体が異常なほどの魔力に包まれる。
「まさか、王が誓約の書の力を……!」
王の剣が光を帯び、雷を纏って俺に襲いかかる。
王の一撃は凄まじかった。剣を交えた瞬間、腕が痺れる。
「ぐっ……!」
「カイ、避けて!」
セリスが炎の魔法を放ち、王を牽制する。しかし、王は片手で軽々と炎をかき消す。
「その程度か?」
その瞬間、王の雷剣が俺の目の前に迫る。紙一重で回避するが、地面に雷が落ち、衝撃で吹き飛ばされる。
「くそっ……強すぎる……!」
「カイ、大丈夫か!」
ルークが駆け寄るが、その背後に王の攻撃が迫る。
「ルーク、後ろだ!」
俺は剣を振るい、王の一撃を横から弾いた。しかし、その衝撃で再び吹き飛ばされる。
「まだ終わらんぞ!」
王が次の一撃を放とうとした瞬間、アゼルが術式を展開する。
「“封雷の陣”!」
王の動きが一瞬止まる。
「今だ!」
俺とルークは一斉に剣を振るい、王を攻撃する。しかし、王は辛うじて受け止め、反撃を繰り出す。
「まだだ!」
王の剣が俺たちを追い詰める中、セリスの魔力が異常なほどに高まっていた。
「……父上……私は……」
セリスの目が揺れていた。
これまで彼女は、父を尊敬し、この国を守ることが使命だと信じてきた。しかし、その父が王国を歪ませる元凶であり、誓約の書による呪いを受け入れた張本人だった。
「……本当に、戦わなければならないの?」
彼女の迷いが生まれた瞬間、王の雷剣が俺たちを襲った。
「セリス、目を覚ませ!」
俺は叫んだ。「お前の愛は、そんなものだったのか!?」
セリスは目を閉じ、深く息を吸い込んだ。そして、彼女の目が決意の光を帯びる。
「……いいえ。私はこの国を、本当の意味で救いたい!」
彼女の体から純白の光が放たれた。
「“聖炎の裁き”!」
巨大な炎の柱が王を包み込む。
「ぐぅぅ……!」
王が苦悶の声を上げる。
「今だ、カイ!」
俺は最後の力を振り絞り、王の剣を弾き、胸元に剣を突き立てる——
——はずだった。
だが、その瞬間、セリスが俺の剣を止めた。
「待って……父を殺さないで!」
俺は驚いて彼女を見た。
「セリス……?」
「父上がこの呪いに囚われていたのなら、私たちが解放しなければならない!」
彼女は王の前に立ち、震える声で訴えた。
「父上、お願い……もう戦わないで……!」
王は荒い息をつきながら、ゆっくりと目を閉じた。そして、力なく剣を落とした。
「……セリス、お前の言う通りだ。」
彼の目には、わずかに後悔の色が滲んでいた。
その時、玉座の間の奥にある誓約の書が激しく輝き始めた。
「これが……呪いの根源……!」
セリスが手をかざし、魔法を放つ。
書は砕け、光の粒となって消えていった。
「これで……終わったのか?」
静寂が訪れ、俺たちは勝利を確信した。
「カイ、ありがとう……!」
セリスが微笑み、俺は大きく息をついた。
こうして、王国の呪いは解かれ、新たな時代が幕を開ける——。




