波乱! 愛のカーニバル開幕!?
俺の計画は順調に進んでいる……と思っていた。料理、歌、ダンスを通じて、「愛とは痛みではなく、喜びによって証明されるもの」という考えを広めることに成功しつつあった。城の侍女や兵士たちも、新しい愛の形に興味を示し始め、求婚の際に料理を振る舞ったり、愛の歌を歌ったりする文化が根付き始めていた。
しかし——
「カイ! すごいニュースよ!」
ある日、セリスが嬉しそうに駆け寄ってきた。
「どうした?」
「王国中に、あなたの『新しい愛の証明』が広まっているわ!」
「それは……いいことじゃないか?」
「ええ、もちろん! だから、お祝いに**“愛のカーニバル”**を開催することにしたの!」
「は?」
俺は耳を疑った。
「愛のカーニバル……?」
「ええ! あなたが広めた新しい愛の形を王国中に示すのよ! 料理、歌、ダンス……すべてを集めて、盛大なお祭りにするの!」
「待て待て待て!」
俺は慌ててセリスを制したが、すでに遅かった。
「すでに王様の許可も取っているわ!」
「なん……だと……!?」
こうして、俺の意図しないまま、王国最大の祭り『愛のカーニバル』の開催が決定してしまったのだった。
しかも、このカーニバルの成功が、俺とセリスの愛を証明する最終試験になるという話まで出てきてしまったのだ。もう後戻りはできない。
祭りの準備は急ピッチで進められた。王宮だけでなく、街中の住民たちも協力し、広場では巨大なダンスフロアが設置され、特設の料理屋台が並び始める。
しかし、準備を進めるうちに、俺は重大な問題に気づいた。
「おい……これ、本当に“普通の祭り”か?」
屋台を覗くと、何やら物騒な料理が並んでいた。
「愛を証明するための“激辛地獄鍋”!」
「この“100時間かけて練り上げた求婚団子”を食べられたら結婚成立!」
「特製“恋のロシアンシュークリーム”! 100個のうち1つだけ激辛!」
俺は頭を抱えた。
「どうしてこうなった……!」
さらに、ダンスのステージではとんでもない競技が始まっていた。
「愛のぶつかり合い! 求婚タッグバトル開幕!」
「ダンス……じゃない……!」
広場では、求婚者同士がペアを組み、ダンスを踊りながら相手を押し倒すという謎の競技が行われていた。もはや愛の祭りではなく、求婚格闘技大会になっている。
「違う……違うんだ……!」
俺は膝をついた。
こうなったら、俺が何とかするしかない。俺はセリスと相談し、祭りのメインイベントとして「愛の劇場」を開くことにした。
「劇を通じて、真の愛の形を伝えるんだ!」
「いいわね! どんな劇にするの?」
俺は考えた末、一つの物語を脚本にした。
『王女と旅人の恋物語』
異国から来た旅人が、戦乱の中で王女と出会い、互いを支え合いながら愛を育む物語だ。戦いや痛みではなく、支え合うことこそが愛であることを伝える内容だ。
「いいわね……とても素敵な話だわ!」
セリスも賛同し、劇の準備が進められた。
祭り当日——
劇は大成功だった。観客たちは涙し、愛とは何かを考え直すきっかけになった。
しかし——
「カイ、これであなたの愛が証明されたわね!」
「……は?」
「あなたが広めた愛の形こそが、私の求めるものよ!」
セリスの目が輝いている。
「ということは……もう逃げられないわよ、カイ!」
「ちょっ……!」
こうして、俺の逃げ場はますます狭まっていくのだった。