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奇策! 逆に「愛を証明」してみる!?

 俺はもう限界だった。この異世界に来て以来、セリスの求愛(という名の拷問)に付き合わされる日々。痛みこそが愛を証明すると信じる彼女に、普通の恋愛の形を受け入れさせるのは至難の業だった。


 しかし、このまま逃げ回っていても埒が明かない。むしろ、俺の立場はどんどん悪くなり、逃げ場がなくなってきている。ならば——逆にこちらから攻めるしかない!


「セリス、俺も本気で愛を証明することにした!」


「まあ! ようやく分かってくれたのね!」


 セリスは嬉しそうに微笑む。しかし、俺の考える『愛の証明』は彼女の想像するものとはまったく異なるものだった。




「まず、異世界にはない『愛の表現』を教えてやる!」


「え?」


 セリスは首をかしげる。俺は続けた。


「例えば、料理だ。食事を共にすることで、お互いの心を通わせるんだ!」


「料理……? それで愛が伝わるの?」


「もちろんだ! 食事は人を幸せにするんだ。美味しいものを食べたとき、人は心から笑顔になる。愛とは、本来そういうものだろ?」


 セリスは少し考え込み、興味深そうに頷いた。


「確かに、それは新しいわね。じゃあ、カイが作ってみせて!」


「任せろ!」


 俺は異世界の食材を使い、手探りで料理を作った。材料は見たこともないものばかりだったが、試行錯誤の末、異世界版のオムライスを完成させた。


「できたぞ! 食べてみろ!」


 セリスはスプーンで一口食べる。そして——


「おいしい!」


「だろ? これが愛の証明だ!」


「でも……物足りないわ!」


「なんで!?」


「やっぱり、愛にはもっと激しさが必要よ!」


 俺は困惑したが、諦めずに料理をさらに増やすことにした。スープやパン、異世界のハーブを使った肉料理、さらにはスイーツまで用意した。


「ほら、次はデザートだ。甘いものを食べると、人は幸せを感じるんだ。これも愛の表現のひとつさ。」


 セリスは疑いの目を向けつつも、ふわふわのケーキを一口。


「……甘くて美味しい。なんだか、心が温かくなるわ。」


「それこそが愛の力さ!」




 料理だけではダメだったか……ならば、次の作戦だ!


「愛を伝える方法は他にもある! 例えば、歌やダンスだ!」


「歌? ダンス?」


「そうだ! 言葉やメロディ、体の動きで感情を伝えるんだ!」


 俺は即席で異世界にはないラブソングを歌い、軽く踊ってみせた。すると、侍女たちや城の兵士たちが興味津々で集まってくる。


「面白い……」


「これが愛の表現……?」


 俺は確信した。ここに住む人々は、愛の表現方法を知らなかったのだ。


「さあ、みんなもやってみろ!」


 最初は戸惑っていたが、次第に皆が楽しみ始めた。歌い、踊り、笑い合う——この一体感こそが、俺の目指す愛の形だった。


「すごい……みんな、楽しそう……」


 セリスも少しずつ理解してきたようだ。俺はさらに本格的なダンスパーティーを開くことを決め、城の広場を舞台にした。


「さあ、俺と一緒に踊ろう!」


 俺はセリスの手を取り、リズムに乗せて軽やかにステップを踏んだ。セリスは最初戸惑っていたが、次第に笑顔を浮かべ、楽しそうに踊り始めた。


「カイ……なんだか、不思議な気持ち……。」


「それが愛さ!」




「カイ、あなたの考えは素晴らしいわ。でも、やっぱり私は、もっと直接的な愛がほしいの!」


「ちょ、待て! それはどういう……」


「これからは、新しい愛の儀式を考えましょう! 料理も歌も踊りも楽しかったけど、私たちの愛にはもっと刺激が必要よ!」


 セリスの瞳が危険な光を帯びる。


「逃げられないわよ、カイ」


 俺は背筋が凍った。まさか、俺の提案が逆に彼女の愛を加速させる結果になるとは……。


 こうして、俺の愛の革命は新たな困難へと突入するのだった。

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