愛と未来の誓い
王国の改革は順調に進んでいた。拷問が愛の証とされる風習は、セリスとカイの尽力によって徐々に改められ、人々は愛を「喜び」で表現することを学び始めていた。
城の広間では、盛大な祝賀会が開かれていた。王国の未来を担う新しい時代を祝うため、貴族も平民も関係なく招かれ、料理や音楽、ダンスが楽しげに披露されている。
「カイ!」
セリスが満面の笑みでカイを見つめた。「この国は、本当に変わりつつあるわね!」
「そうだな。でも、ここからが本当の始まりだよ。」カイはグラスを傾けながら、会場を見渡した。
新たな王国の姿を象徴するように、貴族たちも平民たちと共に踊り、笑い合っていた。これまでの厳しい身分制度が少しずつ和らいでいるのが分かる。
「それにしても……本当に踊るのか?」カイは少し引き気味で尋ねた。
「もちろん!」
セリスは強引にカイの腕を引っ張り、広間の中央へと連れ出した。人々の視線が集まる中、音楽が流れ始める。
カイがセリスとダンスを踊っていると、突然、大きな声が響いた。
「待てぇぇぇぇい!!!」
扉が勢いよく開き、ルークが華麗に登場した。全員が驚いて彼を見る。
「お前らだけ楽しんでるなんてズルいぞ!!」
人々の間にざわめきが走る。
「ルーク、お前……まさかまたセリスを狙って……?」カイが身構える。
「いや、違う!今日こそ俺は、俺の愛を証明するために来たんだ!!」
ルークは突然、隣にいたリーナの手を取った。
「俺はようやく気づいたんだ……愛は拷問じゃない!リーナ、お前こそが俺の愛の証だ!!」
ルークの突然の告白に、リーナは目を見開いた。
「なっ……!」
「リーナ!俺と……俺と踊ってくれ!!」
会場が一瞬静まり返る。しかし、次の瞬間、リーナは微笑んだ。
「……しょうがないわね。」
そして二人は踊り始め、会場は再び賑わいを取り戻した。
「……意外とロマンチックじゃないか?」カイがセリスに囁いた。
「ふふっ、そうね。」
その様子を見ていたアゼルが、小さく笑いながらワインを口にした。
「やれやれ……若者たちは騒がしいな。」
「アゼル、あなたも楽しんでるんでしょう?」セリスがニヤリと笑いながら言う。
「まぁな。」アゼルは肩をすくめながら答えた。「こんな国の変化も悪くない。」
ダンスが終わり、夜空の下、城の庭園を歩くカイとセリス。
「カイ、あなたに言いたいことがあるの。」
セリスは真剣な表情でカイを見つめる。
「うん?」
「あなたがこの国に来てくれて、本当によかった。」
夜空に輝く星の下、セリスはカイの手をそっと握る。
「これからも一緒にいてくれる?」
カイは一瞬驚いたが、すぐに微笑んだ。
「もちろんさ。」
二人はそっと抱きしめ合った。
そして——セリスはそっと目を閉じ、カイの頬に触れた。カイも彼女の手を握り、ゆっくりと顔を近づける。
——そして、甘い口づけが交わされた。
「……愛は、痛みじゃなくて、こうやって感じるものなのね。」
セリスの言葉に、カイは微笑んだ。「ああ、そうだよ。」
二人は何度も抱きしめ合い、互いの鼓動を感じ合った。
「これからどうする?」
「まずは、この国をもっと良くするために動かないと。」カイは空を見上げながら言った。「でも、その前に——」
彼はセリスの手を取って、くるりと回した。「もう一度、踊らないか?」
セリスは笑顔で頷いた。「ええ、喜んで。」
夜空の下、二人は静かに踊り始めた。音楽も何もない場所で、ただお互いの存在を感じながら。
星々が二人を見守る中、物語は静かに幕を閉じる。
—— 愛は、痛みではなく喜びで証明されるもの。
それが、この国の新たな常識となったのだった。