真実の愛の形
ルークは息を荒げながら剣を握りしめ、カイと向かい合っていた。セリスはその様子を不安そうに見つめている。
「お前には分からないだろう、カイ!」
ルークは叫び、鋭い剣撃を繰り出した。カイは紙一重で避けつつ、剣を受け流す。
「ルーク、お前が何を思っているかは分からないが……俺たちはお前を倒したいわけじゃない!」
「黙れ!」
剣が激しく交錯し、火花が散る。だが、カイは徐々に攻撃を受け流しながら、ルークの動きを冷静に見極めていた。
「ルーク、本当にセリスのことが好きなのか?」
その問いに、ルークの剣が一瞬鈍る。
その隙を逃さず、カイは剣を払いのけた。そして、深く息を吸い、まっすぐルークを見つめる。
「お前は“愛の証”を求めている。でも、それはセリスへのものじゃないんじゃないのか?」
「何を言っている……?」
ルークは息を整えながら睨みつけたが、その目には揺らぎが生まれていた。
セリスがそっと前に出た。
「ルーク……あなたが本当に愛しているのは、私じゃないのよ。」
「そんなはずは……」
ルークの表情が困惑に変わる。
「思い出して。私が子供の頃からずっと側にいたのに、あなたは私の笑顔を見てもそこまで嬉しそうじゃなかった。でも、ある人の前では違った。」
「ある人……?」
ルークの頭に、一人の姿がよぎる。
「リーナ……?」
彼が思い浮かべたのは、長年共に戦場を駆けた女性騎士、リーナだった。
彼女はいつも側にいた。戦場で背中を預け合い、疲れ果てた日には酒を酌み交わし、時には冗談を言い合いながら夜更かしをした。彼女の声が聞こえるだけで、不思議と安心した。剣を交えたとき、彼女の動きが読めることに驚いたこともあった。
「……俺は、リーナを……?」
ルークの手から剣が滑り落ちる。
過去の記憶が鮮明に蘇る。彼女が笑っていたとき、彼は心の底から楽しかった。彼女が負傷したとき、胸が張り裂けそうだった。そして、彼女が戦場で命の危機に瀕したとき、なりふり構わず助けに飛び込んでいた。
「俺は……ずっとリーナを……」
彼の目が見開かれ、混乱の中に一筋の理解が生まれる。
「……ああ。」
ルークは膝をつき、呆然とした顔で呟いた。
「ずっと、側にいたのに……俺は何をしていたんだ……?」
セリスはそっとルークの肩に手を置いた。
「今からでも遅くないわ。あなたの本当の気持ちを、リーナに伝えて。」
「でも……俺は今まで、何も気づいてやれなかった……」
「だからこそ、今伝えればいいんだよ。」
カイが微笑みながら言うと、ルークはゆっくりと顔を上げた。
リーナの笑顔が脳裏に浮かぶ。彼女の真剣な眼差し、無邪気な笑い声、そして自分に向けられた優しさ。
「……そうか。俺はずっと、リーナを愛していたんだな。」
しばらく沈黙が続いた後、ルークは苦笑しながら立ち上がった。
「……まったく、お前らには敵わないな。」
彼は剣を鞘に納めると、ゆっくりと歩き出した。
「俺は、リーナに会いに行く。こんな馬鹿なことをしてしまったが……まだ、間に合うかもしれない。」
「うん、きっと。」
セリスの言葉に、ルークは微かに笑った。
こうして、一つの戦いが終わり、新たな未来が開かれたのだった——。