表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/27

16 耐久レース

物語はひ二学期に突入!

 

 もしも、今日が最悪の日になると知っていたら、どうするだろう。

 最悪の出来事から逃げる努力をしたり、或いは自分の部屋に閉じこもったり。

 能動的に事態を避けるように動く、と思う。


 しかし、俺は違う。

 ただ「耐える覚悟」をするだけだ。

 例えば、学校のマラソン大会。

 マラソン嫌いの俺にとっては、最悪の事前告知といえる。

 しかし俺は、何もしない。

 仮病を使って休んだり、練習して苦手を克服しようとは、思わない。

 最悪を乗り切る覚悟を固めるのみ。

 昔から、そうしてきた。


 杜若(かきつばた)はといえば。


「私なら、どうやって楽しむかを考える、かなぁ」


 という、なんとも前向きな答えを返された記憶がある。

 さすが『最優等生』を目指す人物は違うものだ。


 しかし、そんなポジティブな杜若(かきつばた)あやめですら、前向きになれない時は来る。

 人生なんて、障害物もゴールも見えない耐久レースなのだから。


 二学期が始まると、文化祭の足音が聞こえてくる。

 やれクラスの出し物は何が良いやら、バンド組んでステージに立とうぜ、など、それはもう多岐にわたる。


 最悪なのは、文化祭実行委員会、略して文実(ぶんじつ)の、クラスから出る委員を決めることだ。

 これさえ回避できれば、あとは適当にやり過ごすだけ。

 と思ったら、以前一度だけ俺の家に押しかけてきて、杜若(かきつばた)と一緒にベッド座りやがった加瀬という男子が立候補した。

 なんでも去年の文化祭を見て、自分も委員をやりたいと思ったそうだ。


 加瀬くん、うちのクラスにいてくれて本当にありがとう。


 さて、あとは文化祭当日の隠れ場所を探すだけ。


「──に決まりました」


 え、考え事してる間に、なんか決まってた。


「じゃあ、ここからはアタシが進行しまーす」


 いつのまにか、司会進行まで決まってる。

 てかあれ、いつも杜若(かきつばた)にくっついてる取り巻き女子の一人、だよな。

 ついに独立か。いやフランチャイズかな。

 ちらっと杜若(かきつばた)を見ると、頑張れっ、みたいな顔で目を輝かせている。

 そういやあいつも、文化祭を楽しむ側の人間だったな。


 杜若(かきつばた)の幼い頃を、ふと思い出す。


「あの高校の最優等生になれるくらいに、頑張りなさい」


 と母親に言われ続けてきた、らしい。

 そしてその話の高校が、今俺たちが通うこの高校である。

 なんでも最優等生という称号は、ごく一部の関係者しか知らないらしい。

 校内で口に出すことも躊躇われる、そんな称号だそうで。


「お母さんと同じ最優等生になるんだ!」


 そんな称号を目指して、杜若(かきつばた)あやめはこの高校に入学した。

 俺なんて、ただ家から一番近いという理由だったのに、立派な志である。


 ま、そんな杜若(かきつばた)の母親は、杜若(かきつばた)が中学生になる前に離婚してしまったというから、人生いろいろだよな。

 最優等生に選ばれても、人生そのものが上手くいくわけではない。


 そもそも、そんな誰も知らない称号にどれだけの価値があるのか、その根本を疑ってしまう俺がいるのだが。


 そんなこんなで、文化祭関連のホームルームは何もせずに終わった。

 上々の結果である。

 で、このクラスって、何をやるの?




 クラスの出し物が喫茶店だと知ったのは、それから二日後。

 杜若(かきつばた)に言われてのことだ。


「違うよ、カフェだよ」


 まったく違いがわからない。


「今回はね、女子だけでやるんだって」


 ほほう、それは嬉しい情報だ。

 男子に生まれて幸運でした。


「リコちゃんがね、張り切っちゃって」

「え、誰」

「教室でよく私といる、進藤さん」

「ああ、取り巻きの」

「……それ、本人の前で言っちゃダメだよ」


 つまり、以前言われたことがあるワケだ。

 みんな同じような印象を持っている、ということだな。


「でも最近、リコちゃんは私を避け始めてる気がするんだ」

「そりゃあれだ。独り立ちだ。フランチャイズだ」

「なにそれ、コンビニ?」


 苦笑する杜若(かきつばた)だったが、その表情は何処となく暗い。

 早くも前向きになれない出来事が現れてしまったのか。

 ならば、俺の役目はひとつ。

 杜若(かきつばた)の支援、バックアップだ。


「週末あたりに気分転換、するか」

「するっ!」


 あれ、元気なかったはずでは?



お読みくださってありがとうございます。

最優等生ってなんだ? と思ったら、ぜひ次話を。

よろしければ今後のお話もお楽しみください。

ではまた、明日の19:30に、この場所で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ