シャルル王国の城下町
シャルル王国に滞在して数日経った。
そろそろ行動しなければと思っているが、あれこれシーナや国王・王妃に呼び止められ中々上手く行かない…。
今日こそは!
と意気込んだが、シーナがこう言った。
「リリア、もう少しでお祭りがあるから、その時に街を案内するわ〜。」
そんな事していたら、ダラダラと何もしていないように過ごしているようで嫌なのだが、他に頼める相手もいないので断念しようとした時、助け舟がやってきた。
「シーナ、リリア王女は想い人を探そうと遥々シャルル王国まできてくれたのに、出鼻を挫いてはいけないよ。」
「シャルディお兄様…調査が終わったらリリアが帰ってしまうでしょう?少しでも一緒にいたいのよ。」
「それでも彼女がここに滞在している意味をわかっているよね。そのリリシア殿下を早く探さないと殺されてしまうんだよ。困らせるような事をするものではないよ。」
「シーナはいい子だ。そうと決まれば、俺が直々に城下町を案内しよう!リリア王女も良いよね?」
「えっ?シャルディ殿下直々ですか!?それなら1人でも…。」
「リリア王女もご自分のお立場がお分かりかと思いますが、これはシャルル王国の沽券に関わる事なんです。あなたを誘拐されたりしたら、ジョンヨン殿下とシーナの婚約も無かったことになる。そうなるとシーナが可哀想ではありませんか?やっと漕ぎつけたというのに、あなたが1人で出歩いたという事だけでシーナは好きな人と一緒になれないんです。それが1番嫌です。私が直々に案内する事なんて滅多にないのですよ。」
とグチグチ長々と話している。
言いたいことは分かる。
やっと妹が好きな人と婚約したのだから、これ以上つらい思いをさせたくないという気持ちがひしひしと伝わってくるからだ。
「それでは、シャルディ殿下にご案内お願い致します。」
リリアは大人な対応をした。
何であれ、調査に協力してくれるという気持ちは厚意だと思うから。
「最初っからそう言ってくれれば、こんなに長々と話してないんだけど?人の厚意をありがたく受け取ったら?」
こっちが素なのを忘れかけていた。
初対面からこの調子だったのに。
「お兄様がごめんね。私も案内したいのは山々何だけど、まだ花嫁修行が残っているの。終わったら私も一緒に調査するからね!お兄様、リリアの事よろしくね!」
とそそくさと去っていく。
本当に忙しい?のか、兄と関わるのが面倒だから去ったのか。
今は関係のない事だ。
リリアは大人しく、シャルディの提案した通り城下町の案内をお願いした。
2人はすぐ城下町に行く支度をする。
リリアは貴族の令嬢で、シャルディはその婚約者という設定…。
婚約者という設定になった理由は、その方がより自然だろうという事だった。
調査の為とはいえ、一国の王子の婚約者(仮)はいくら一国の王女の立場のリリアでも気が引ける。
「リリア王女の中々可愛いね!」
褒められているのかわからないけど、一応お礼を言う。
「ありがとうございます。他国の王子からお褒めに預かるのは光栄な事です。」
「あっははは…。今まで褒めてくれた人いなかったの???」
と可哀想な人を見る目で言った。
「お恥ずかしながら、男性はジョンヨン殿下以外からお褒めの言葉をいただいたことがありませんので。」
ジョンヨン殿下からしか言われたことがない!?
中々のパワーワードである。
今、この場にシーナがいなくて良かった!
シャルディは心の底から思ったのだった。
「彼は…可愛いと言ってたのかい?」
「えぇ、いつもエスコート役をしてくださいました。後はいつもドレスとスーツがお揃いだったり。いつもリリアは綺麗だね!他の令嬢よりも美しいよ!とかですかね。」
「へぇ……彼がそんな事をいう人だったとはね。いつも無表情で女性に対しても冷たいのかと思っていたよ。」
「ジョンヨンは優しいですよ。王妃教育は本当は1人で受けないといけないのですが、ジョンヨンは私が心細いだろうと学院に通わずにずっと側にいてくれました。本当に有り難かった。一緒に育ったので家族のような…関係だと思っていたのですが、彼にとっては違ったのですね。」
リリアはお城から、遠くの城下町を見つめた…。
シーナを傷つけるより、ジョンヨンを振った方がマシだったからだ。
「君はジョンヨン殿下の気持ちに気付いていたけど、気付いていないフリをしていたのか。賢明な判断だったと思うよ。この件に関しては、いつけしかけてもおかしくなかったから。」
「えっ。もしかして、何度もジョンヨンに打診していたのですか?」
「そうだよ。シーナが一目惚れした相手がフリーなら、打診しかないだろう。なのに頑なに首を振らない。調べたら君が原因だったってわけ。改めて目を覚させてくれてありがとう。君が告白を受けたら、黙っていられなかっただろうから、思いとどまらせてくれてありがとう。」
至って冷静だが、顔は虫ケラを見るような目だ。
恐らく、リリアをよく思っていない人だ。
妹に危害があるかどうか見極める為にも、監視として自ら案内を買って出たに違いない。
間違いなく、シャルル王国を敵に回さなくて良かった。とリリアは心の底から安堵した。




