婚約破棄はしたくない!
お披露目会の騒動で、ジョナサンとライラは笑い者になっていた。
街中どこもその話題で持ちきりだ。
学院に行っても、生徒達の間ではこの話で持ちきりだ。
皆、2人の事を怪しんでいたが、今回のことで確信に変わった。
ジョナサン殿下というあろう人がね…。
歴代の国王陛下は、一途で通ってきたのになぁ。
いくら会えないとはいえ、他に連絡手段はあるだろうに。
私が婚約者だったら、泣き寝入りだわ。
ライラ様もあまり良い話を聞かなくてよ。
と、2人が通る度にヒソヒソ話をしている。
本人達に聞こえているのだから、ヒソヒソしてはいないか。
「ジョナサン殿下…私達、針の筵じゃありませんの!?」
ライラはいてもたってもいられず、声を荒らげた。
「仕方がないだろう。全て事実だ。婚約破棄はしたくないのも又事実。」
ライラと対照的でジョナサンは至って冷静だった。
その態度に又ライラは腹を立てる。
「婚約破棄しないって本当なんですの?」
ライラは静かな口調で問い詰めた。
「あぁ。10年も顔を合わせていなかったとはいえ、あんなに美しく成長しているとは。やはり血は争えないな。しかも異国から戻ってきたという解釈が…」
話の途中でドアが開いた。
夜分遅くに誰だと言わんばかりの形相でドアを見る。
「今頃、気が付いたのか。我が兄上は本当に愚かですね。リリアは間違いなく父上のおじ上の子孫です。異国に住んでいた時は見た目があまりにも違いすぎて、親族からも怪しまれたとか。それで祖父のペンダントでこちらに戻ってきたという解釈が正しいかと思いますが。」
「ジョンヨン!こんな夜遅くに無礼だぞ!」
「兄上に言われたくありませんよ。」
と一蹴した。
元々兄弟仲は良くなかったが、ジョンヨンはリリアの事で益々嫌悪する様になっていた。
「ジョンヨン殿下!リリア様の事がお好きなのでしょう?でしたら、ジョナサン殿下との婚約破棄に協力してください。」
ライラは勢いよく前のめりに申し出た。
だが返ってジョンヨンの逆鱗に触れてしまうとは考えなかったのだろう。
「貴様ごときが私に意見を申すとは…。婚約は当然破棄してもらう。だが、2人とも国外追放という形になるだろう。兄上には王位継承権を放棄してもらうことになる。」
ジョナサンは今までの恨み!
とばかりに激しく2人を非難した。
10年の恨みがチリも積もれば山となったのだろう。
「えぇ…俺はリリアと婚約破棄はしたくないのだ!ライラは側室に…。」
「私が側室!?話が違うのではありませんか!?」
2人でギャースカ揉めている。
それを遠目にジョンヨンは部屋を去り際にこう言った。
「仮にライラ嬢の様な方が王宮に輿入れされたら、王宮の品位が疑われますね。リリアの足元にも及びません。それは兄上もご理解されている様ですね。まだ救いようのある脳みそで安心しましたよ。側室は辞退されて下さいね。兄上はライラ嬢とお腹の子と仲良く暮らして下さい。それでは。」
ドアの隙間から腹黒い微笑みが見え、ジョンヨンと話したのが最後である。
「なんと私は愚かな事を…。」
「王位継承権のない男なんて…こっちから願い下げよ!妊娠もしていないし、さようなら!」
と何故かライラからも見捨てられたジョナサン。
彼が後悔した日はこの日以外にあっただろうか?
一瞬で自分の立場が無一文になった。
恋人にも王族じゃなくなったからと捨てられ。
ジョナサンは一晩中涙をひたすら流したのだった。




