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没落皇子と異世界の姫  作者: 九条ましろ
第二章 婚約破棄は…しない!
11/19

10年の月日は早い

あれから10年の時が経った。

いよいよリリアも婚約お披露目会が近づいて、自由に出歩ける日がくる。

この日をどれほど待ち侘びたか。

天にも上れそうなほど、気持ちが昂っている。


「はぁ…やっとね!ジョンヨン殿下に報告しなきゃ〜!」


軽やかな足取りでジョンヨンの部屋を目指したが、道に迷ってしまった。

この王城は広過ぎる。

ふとヒソヒソ話をする声が聞こえたので、耳を傾ける。


「ジョナサン殿下〜いつになったら、私と婚姻するのでしょうか?婚約破棄はまだですか?」


と甘ったるい声が聞こえてきた。

声の主はジョナサンと懇意なのだろうか?


「今度お披露目会が決まった。その日に婚約破棄しようと計画している。リリアなんてライラの美しさに目が霞んで存在が見えないかもね。」


と今度はジョナサンがリリアを小馬鹿にしている。

一体誰のお陰で隠居生活をしていたのか。

元凶の男が何を言うという話である。


「そこまで私は美しいのでしょうか?殿下もお世辞がお上手で〜!」


ライラと呼ばれた女性はとても嬉しそうだ。

そっとドアを開けて見ていると、ボディタッチが多いというより、もうこれは恋人同士である。


リリアは愕然とするより、自由になりたかったので婚約破棄されても構わないが、その後の婚姻に響きそうであることが気がかりだ。

一度は結婚してみたいな〜と思っているから。


「やっぱり、お兄様は他の女性に走ったか。あれほど忠告したのに、それも忘れているのか。全くどこまでも失望させてくれるなぁ〜」


後ろからいつも聞いている声が。

そうジョンヨンだ。

いつもより低い声で囁いていた。


「ジョ…ジョンヨン。いつの間に後ろにいたの?驚いてしまったわ。」


先程の低過ぎる声を聞いたからなのか、心臓がバクバクしている…。

恐怖を煽る声だ。


「ごめん!いつまで経ってもリリアが部屋にこないから、迎えに行ったらいないし、探してたら何故かお兄様の部屋の前にいるし。今の会話聞いてたの?」


「えぇ…。偶然にも聞いてしまったわ。見知らぬ女性と恋人同士みたいだったし。」


「みたいじゃなくて、そうなんだよ。」


「えっ!?」


「お兄様は、学院のマドンナ?といわれている公爵家のライラ様に夢中ってわけさ。友人が学院に通っていて、皆周知されているから間違いない話だと思うよ。お兄様が申し訳ない事をした。」


ジョンヨンは深々とリリアに頭を下げた。

それはもう痛々しいくらいに。


「ジョンヨンが悪い訳ではないのだから、謝らなくて良いのに。頭を上げて。」


至って冷静を装うがリリアは動揺していた。

婚約者がいたら、一応他の女性や男性に靡かないと決まっているからだ。

ジョナサンの場合は、10年も会っていない婚約者の顔なんて遠に忘れているというわけだけど。


「私も好きな人見つけようかしら…。いっそ国外に出るのも良さそう。」


「駄目だよ。リリアはこの国にずっといてくれないと…。国外追放されたら、僕も着いていくよ。1人だと心配だから。」


「ありがとう。もう大人だからその辺は大丈夫だよ。1人でも国外に行けるから。」


全く、ジョンヨンの気持ちには気付いていない。

リリアは鈍感なのか、恋をしたことがないからなのか、そういう話には疎い。

周りのメイドや執事達も、ジョンヨンの気持ちを察して、励ました。

ジョンヨンも、婚約破棄について気になって仕方がない。

直接聞いてみるか…。

そう思ってドアをバーンと蹴り上げて開けた。


部屋にいた2人は当然の事ながら、驚いてこちらを見遣る。

ドアは蹴り上げた衝撃で閉まらなくなってしまった。


「うわっ…誰かと思ったら、我が弟のジョンヨンではないか。驚かさないでくれ。何か用があるのか?」


「用というほどでもありませんかが、婚約者がいる身分で他の女性と2人きりで親密な会話をするとは…如何なものかと思いましてね。」


ジョンヨンは笑顔で圧力をかけてくる。

それは今までで1番の笑顔である。

まさに貼り付けた笑顔というべきなのか。


「あぁ、彼女は学院の同級生でね。勉学の相談を受けていたのだよ。」


あくまでも、同級生という体で通そうというのが見え見えだ。

しかも、フェリカ王国王位継承権第1位であるジョナサンが、こんなに頭の弱いお方だとは国民は知る由もない。

本当にこんなのが国を背負って立っていけるのだろうか?


「お兄様、"ただの"同級生ならここで密会など致しませんが。しかも、リリアもいるのに遭遇しない保証はありませんよね?現に彼女は今、密会現場を目撃したのです。ただでさえお兄様が婚約者に指定したお陰で、息の詰まる王妃教育をさせられて、その上浮気までされて…彼女の心はズタボロ同然。この落とし前どうつけるおつもりですか?」


更に迫力が増す笑顔。

最早ホラーさながらである。


「ジョンヨン殿下!どうかジョナサン殿下をお許し下さい!私が…私がジョナサン殿下に懸想してしまいました。罰するのは私だけで…。」


「おお…何と健気なライラ…。そなたの美しさに免じて私が許そうではないか!良いな?ジョンヨン。」


「いや、全然話が逸れています。それに、ライラさんではなくて、お兄様に言ったのですが、どうもご理解頂けていないようですね〜。リリアに謝れよ!」


いつも感情を出さずに温厚なジョンヨンが、声を荒らげた。

これには王城の執事やメイド達も立ち止まるほど…。

それほど、驚きを隠せなかった。

リリアも驚いて、開いた口が塞がらない。


「ジョンヨン、もう良いから…。どの道悪役に仕立てあげられているのでしょうから。国外追放ですか?」


リリアはジョナサンに問いかける。

国外追放なら、自由だー!

なんて夢を見ながら、思っていた。


「処罰を決めるのは、婚約お披露目会まで待ってくれないか?」


「わかったわ。」


という事で、Xデーまでお預けになった…。

お互いに顔を合わせずに。

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