雪山での男たちの戦い
「なぁ、やっぱりやめようぜ」
「ここまで来て何言ってんだよ。やるしかないんだよ、俺達は!」
村外れに出来たゴブリンの巣を前に、男達は揉めていた。
レニオン村外れの森の奥。一歩間違えば遭難しそうな雪山で、二人は叫ぶ。
「俺達、男になるんだろっ!」
「でもこんなやり方間違ってるっ!」
最近、村の娘がゴブリンに攫われる事件が頻発していた。
たまたま狩りで遠征した際、隣の男がゴブリンの巣を発見。
俺を呼んで二人で奴等の巣の前にいる。
額に滲んだ汗が、彼等の緊張を物語る。
クリスは拳を握りしめる。
「俺たち二人、全然イケメンじゃないし、ここで頑張らないと一生童貞だぞ」
「だからって、ゴブリンに攫った女の子を御裾分けして貰うなんて、人として終わってる!」
「プライドは捨てろ!」
そう言って、肩から下げた荷籠をトールに見せる。
籠の中は、今年収穫した芋がぎっしりと詰まっていた。
「この最上級の芋を見せれば大丈夫だ!」
本気の目だ。
「悩んでいても仕方ねぇ!行くぞ!」
「どうなっても知らねぇぞ」
巣穴に向かって走り出したクリスの背中を追って、トールも同様に巣穴に向かった。
暗く、ジメジメとした洞窟内。時折響く水滴が落ちる音。
暫く歩くと、話し声が聞こえてきた。
「む、村の娘がいたぞ。ゴブリンも三匹いる!」
娘は壁穴に鉄の杭をはめただけの簡易的な檻の中にいる。
先程のクリスの声に、ゴブリンが反応し、剣を携えこちらに向かって走って来た。
クリスの目がきらりと輝く。
「今だっ!」
手にした木の板を地面に滑らせ、宙を舞ったクリスが投げた板の上に膝の上から着地する。
スライング土下座である。
「む、村の娘たちを俺達に分けてくれっ」
瞬間、背負った籠の中の芋がゴブリンの足元に転がり、足を取られた奴等は手にした剣で互いを刺して死んでしまった。
残りのゴブリンが叫び声をあげる。
「ひいっ!」
逃げる為に上げた頭がゴブリンの顎にヒットし、そのまま即死。
「・・・・・・えーっと」
檻に捕らわれた娘に向かって微笑み、親指上げてグッドポーズ。
「助けに来たぜ!」
檻から出た娘達は正座させた二人の男の前で仁王立ちしていた。
「おいお前ら。さっきゴブリン共に私等を『分けろ』とか言ってやがったな」
「そ、それは誤解で・・・」
「うるせぇ!この事は村に帰ったらしっかり村長に言っとくから・・・」
ギラリと娘達の目が光る。
「首洗って待ってろ!」
その後、クリス達が童貞を捨てられたかは定かではない。