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9 おわり

(9)おわり



 その後、長崎S女子大学学生寮における下着泥棒事件はぱたりと途絶えた。

 出戸巡査は警らとして事件の起きた場所に出向くが、しかしながらもうそこは過去の事件の場所で、今の自分にはもう居場所が無いように感じている。

(警察と言うのは用が済めば泡濁の様に事件現場から消えてゆくのかもしれない)

 警らの途中で学生寮の前出止めた自転車にペダルに足を掛けると巡査は自転車を漕ぎ始める。

 四天王寺ロダン。

 彼は別れ際に――明日にでもここを出ます。それでは後はお任せします、と言って去って行った。

 では出戸巡査はその後、あの事件をどうしたか。

 彼はここでも不思議な決断をした。つまりあの事件における最後は調書に四天王寺ロダンを尋問して聞いた事を最後に、事件が終えた様に買い込んだのである。

 最後に何を書いたか。

 それはロダンが交番で話したことを要約して、簡易明瞭に。

 つまり


 ――鳥が盗んだという証言アリ。


 と書いた。


 それで以後は盗難が無い。つまり最早これ以上の解決は出来ないのである。

 巡査はペダルを漕いでゆく。その速度はぐんぐん早くなる。


 だが、本当の事件の解決はこうである。


 巡査は小野寺麻衣子に恋をしてしまった。彼はロダンに遂にその事を語る事は無かったが、初めて夕闇の中で彼女を見た瞬間から、既に彼女に対して恋に落ちていたのである。

 だからこそ調書はどう理解されてもいい体裁で終らせたのだ。

 そう、恋する彼女を敵から守るために。

 故に、もしかしたらこの事件の解決方法はひとつかもしれない。

 それは全てを誰かの心の中に仕舞い込み、決して外に漏らさない。それにはそれを背負うべき人物の強い思い込みが必要だろう。

 つまり巡査がそれを引き受けた。それもごく自然に。

 それは恋、

 プラトン曰く『(エロス)』の為にとも言うべきであろうか。


 兎にも角にも下着泥棒は出戸巡査の警ら管轄から消えた。


 四天王寺ロダンが去ったのと同じように。


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