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二部 その14(王子様、現る!6)

邸宅に着くとリン自ら迎えに出て来た。

「リン、お前知ってやがったな!」

ティナが馬車を降りるのに手を貸しながら、リンが姿を現すとすぐに問い詰めた。リンはすまんすまんと苦笑いだ。

「ここのところあやしいとは聞いていたが、まさかこんなに早くに亡くなるとは思ってなくてな。」

だからこそ、周囲が急に王子に結婚を勧めだしたのだろうし、リンも暗殺の手から逃れさせるために一足早く王都から連れ出していたのだろう。このどこかおっとりとした王子様はどうやら今の今まで自分の置かれた境遇を分かっていなかったようだ。

続いて馬車から降りてきた王子にリンは低頭して挨拶する。

「この度の災厄、心よりお見舞い申し上げます。本宅から迎えをよこすと先ほど知らせがありました。それまではここでゆっくり寛がれるがよろしいでしょう」

「ああ、何から何まですまないなリン。しかし、今回のことはいろいろと厄介だな。叔父上めまさか本気で狙ってくるとは・・・」

王子は手袋を脱ぎながら腰の剣を外す。すかさず従者が受け取って下がった。ここぞとばかりにチェリオが揉み手せんばかりの勢いで王子に近寄って行った。

「王子様、その件に関してですがこちらもいろいろと伝手がございまして」

まあチェリオなぞこのために付いてきたようなものである。

「ああ、そうかそなた情報通であったな・・・聞こう。ところでリン、その喋り方はなんとかならんのか。子供のころはオレを冷笑すらしていたくせに」

「おや、お気に召しませんで?」

リンも付いて3人で奥に歩いて行ってしまう。商魂たくましいことで。

まあ見たところ、大して統率の取れていない烏合の衆のような集団だったのでチェリオの情報網に掛かれば特定も早かろう。肝心なところで金をケチって目的を果たせないようではその叔父上というやつも大した相手ではあるまい。

こちらもやって来た侍女に案内されて部屋へ向かった。


王子には翌早朝に迎えが訪れた。

浅い眠りに微睡んでいた夜明け頃に、階下の雰囲気が少し変わったのですぐにそうとわかった。起きて降りて行ってみれば、護衛兵らしき男の側に、屋敷警備の兵士が緊張した面持ちで並んで待っていた。すぐに支度を整えた王子とリンが現れた。

「世話になったな。また日を改めてこの礼はするつもりだが今は急ぎ行かねばならない。唐突な出立で礼を失して申し訳ない」

「いいってことよ。達者でな」

広間の玄関扉を抜けると、まだ薄暗い中を護衛兵が列をなして並んでいた。その後に馬車が待機している。リンが短い言葉をかけただけで仰々しい出迎えや別れの儀式もなく人目を忍ぶように帰って行った。

喪中であることもそうだろうが、襲撃を警戒してのことだろう。これから葬儀や相続などで忙しくなる。達者でやれよ。


因みにチェリオはいつの間にか姿を消していた。まあ、もともとそういう奴である。王子から実入りのいい依頼でも貰ってさっそく飛び回っているのだろう。

さあって、オレも戻ってもうひと眠りするかな。



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